シルバー価格が上昇を続ける中、インフレ対策や資産分散の一環として、銀投資を始めたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
中でも注目を集めているのは、シンプルな仕組みと手軽さが魅力の「銀(シルバー)ETF」。
現物保有のように保管場所を気にする必要がなく、少額から投資を始められるため、初心者にも人気が高まっています。
本記事では、そんな銀ETFの基本から、おすすめ銘柄の紹介、銀投資のメリット・デメリット、将来性などについて詳しく解説します。
- 日本で購入可能なおすすめ銀ETF銘柄
- 銀ETFのメリット・デメリット
- シルバー市場の特徴や見通し
- ETFの購入におすすめの証券会社
- その他のおすすめしたい投資商品
これから銀投資を始めたい方や、その他の効果的な資産運用商品をお探しの方は、ぜひご参考になさってください。
銀ETF(上場投資信託)とは?
銀ETFとは、「銀の価格の変動に連動するように設計されたETF」です。
ETFは、Exchange Traded Fundの頭文字を取った略称で、日本では「上場投資信託」とも呼ばれます。
上場投資信託という名の通り、ETFは一般的な投資信託の特徴を備えつつ、さらに証券取引所にも上場しており、株式のようにリアルタイムで売買できるという特性を持っています。

- 株のように証券取引所に上場しており、取引時間中にリアルタイムで売買可能
- 特定の指数や資産(株式、債券、不動産、商品など)の価格に連動
- 一つのETFで複数の銘柄や資産に分散投資できる
- 対象資産を直接購入するよりも少額から投資できる
- 一般的な投資信託に比べて運用コスト(信託報酬)が低め
銀(シルバー)ETFの場合、銀市場の関連指標に連動して値動きします。
投資家が銀ETFを購入すると、ETFの運用会社は、投資家から集めた資金をまとめて銀市場に投資します。
投資家自身は、銀の現物を直接購入・保有することなく、銀価格の変動を活用して利益を出すことが可能です。
では続けて、日本国内の証券会社で購入できる銀ETF銘柄にはどのような種類があるのか、またどの銘柄がおすすめなのか、それぞれ比較しながら解説していきましょう。
日本で買えるおすすめ銀ETF銘柄を比較紹介
日本の証券会社を通して購入できる銀ETFは、2025年1月17日時点で、国内ETF3銘柄、米国ETF2銘柄の5銘柄あります。
国内上場の銀関連ETF一覧
国内の証券取引所に上場している銀ETFは以下3銘柄です。
対象指数 | 取引価格 25/1/17時点 | 純資産総額 25/1/17時点 | 信託報酬 | |
---|---|---|---|---|
【1542】純銀上場信託 (現物国内保管型) | 「グラム・円」単位の 銀地金の理論価格 | 14,145.0円 | 193.81億円 | 0.55% |
【1673】WisdomTree 銀上場投資信託 | ロンドン地金市場協会 (LBMA)の銀価格 | 4,380.0円 ※10口から購入可 | ※14.4億USD (約2,242億円) | 0.49% |
【1676】WisdomTree 貴金属バスケット上場投資信託 | ロンドン白金・パラジウム市場 及びロンドン地金市場協会 に基づく貴金属価格 | 25,010.0円 | ※1.31億USD (約204億円) | 0.44% |
では、各商品の詳細を見ていきましょう。
【1542】純銀上場信託(現物国内保管型)

【1542】純銀上場信託は、大阪取引所の先物価格をベースとして算出した「銀地金100グラムあたりの理論価格」との連動を目指す国内ETFです。
三菱UFJ信託銀行が運用するETF「金の果実シリーズ」の一つで、一定の受益権口数を持っている場合、受益証券と引き換えに、現物の銀地金に交換することができるのが特徴です。
純金上場信託(愛称「金の果実」)
純プラチナ上場信託(愛称「プラチナの果実」)
純銀上場信託(愛称「銀の果実」)
純パラジウム上場信託(愛称「パラジウムの果実」)
参考:三菱UFJ信託銀行|「金の果実シリーズ」
過去5年間の平均リターンは、円ベースで年率19.25%(2025/1/17時点)で、分配金の支払いはありません。

信託報酬は0.55%と、日本で購入できる銀ETFの中では最も高い設定です。
ただし【1542】純銀上場信託は、新NISA成長投資枠が利用できるため、NISAを使って銀ETFを購入したい人にはおすすめです。
NISA口座で購入する場合、楽天証券・SBI証券・マネックス証券などで、国内ETFの売買手数料が無料になります。
またSBI証券の「ゼロ革命」、楽天証券の「ゼロコース」の該当者であれば、NISA口座を利用しない場合でも、取引手数料無料で投資可能です。
【1673】WisdomTree 銀上場投資信託

【1673】WisdomTree 銀上場投資信託は、ウィズダムツリーの関連会社が運用し、ロンドン地金市場協会(LBMA)の銀価格に連動することを目指す国内ETFです。
2025年1月17日時点の取引価格は「4,380.0円」ですが、売買単位は10口からとなっているので、最低約4万4000円程の投資資金が必要です。
過去5年間の平均リターンは、円ベースで年率19.45%(2025/1/17時点)で、分配金はなし。リターン面では、【1542】純銀上場信託と大差ありません。
ただし、取引量は5000口以下(過去90日の平均)と少なめなので、高い流動性を求める短期トレーダーには適さない可能性があります。
信託報酬は0.49%で、【1542】純銀上場信託の0.55%より低い設定です。
しかし、新NISAの対象銘柄ではないので、NISAの非課税枠内で投資したい人には不向きです。
SBI証券の「ゼロ革命」、楽天証券の「ゼロコース」の該当者であれば、NISA口座を利用しない場合でも、取引手数料無料で投資可能です。
【1676】WisdomTree 貴金属バスケット上場投資信託

【1676】WisdomTree 貴金属バスケット上場投資信託は、前述の2銘柄とは異なり、銀だけではなく、金・白金(プラチナ)・パラジウムといった貴金属の価格に連動することを目指します。
投資家は貴金属市場全体に幅広く投資でき、特定の金属価格の変動リスクを軽減させることが期待できます。
構成比は以下の通りで、金と銀を中心とすることで価格変動を抑えつつ、パラジウムやプラチナを加えることで、特定の産業分野での成長の可能性も取り入れています。
金:61.26%
銀:21.26%
パラジウム:11.45%
プラチナ:6.03%
(2024年7月時点)
過去5年間の平均リターンは、円ベースで年率11.83%(2025/1/17時点)で、分配金はなし。
プラチナとパラジウムの価格低迷や、金の相対的な安定性により全体の価格上昇が抑えられた結果、純粋に銀価格の上昇を反映した【1673】WisdomTree 銀上場投資信託よりも控えめなリターンとなっています。
ちなみに、【1676】WisdomTree 貴金属バスケット上場投資信託も、新NISAの対象銘柄ではありません。
また、取引量が少ないため、高い流動性を求める短期トレーダーには適さない可能性があります。
米国上場の銀関連ETF一覧
次に紹介するのは、米国上場の海外ETFで日本で購入可能な銀関連ETF銘柄です。
銀価格に純粋に連動するのは【SLV】という銘柄のみで、【SIL】は銀鉱山株に連動するETF商品です。
対象指数 | 取引価格 25/1/17時点 | 純資産総額 25/1/17時点 | 経費率 | |
---|---|---|---|---|
【SLV】iシェアーズ シルバー・トラスト | ロンドン地金市場協会 (LBMA)の銀価格 | $27.61 | 141.88億USD | 0.50% |
【SIL】グローバルX 銀ビジネス ETF | ソルアクティブグローバル 銀鉱山指数(SOLGLOSI) | $33.01 | 11.1億USD | 0.65% |
【SLV】iシェアーズ シルバー・トラスト

SLVは、世界最大級の資産運用会社であるブラックロック(BlackRock)が運用する銀ETFです。
現物の銀を保有することで、銀地金価格(LBMA銀価格)に連動することを目指します。
過去5年間の平均リターンは、米ドルベースで年率10.41%です(2025/1/17時点)。
前述の国内の銀価格連動ETFよりもリターンが低いのは、SLVのリターンが米ドルベースで計算されているのに対し、国内ETFは円ベースで計算され、過去数年間の円安の影響(過去5年間で約43%円安に)でリターンが上振れしているためです。
日本で購入できる銀ETFの中では最も市場での取引量が多く、流動性に優れているため、売買をスムーズに行うことが出来ます。
またSLVは、新NISA成長投資枠を利用可能です。
NISA口座でSLVを購入する場合、楽天証券・SBI証券・マネックス証券などで、売買手数料が無料になります。
【SIL】グローバルX 銀ビジネス ETF
日本で購入できる銀関連のETFには、銀価格ではなく、銀鉱山企業の株価に連動するETFもあります。

SILは、銀鉱山会社の株式に投資するETFで、ソルアクティブ・グローバル銀鉱山指数に連動します。
銀鉱山を運営する企業や、銀の採掘、加工、流通に関与する企業を中心に構成されており、銀そのものの価格変動だけでなく、銀産業全体の成長性や収益性に投資できる点が魅力です。
しかし、過去5年間の平均リターンは、米ドルベースで年率2.64%に留まっており、SLVの年率10.41%(前述)とは大差が開いています(2025/1/17時点)。
これは、銀鉱株ETFが、銀そのものの価格変動に加え、鉱企業の運営状況や市場環境によっても価格が影響を受けるためです。
過去5年間では、銀鉱山企業が運営コストの増加や地政学的リスク、規制強化により利益を圧迫されたことなどが、SILのパフォーマンスが不調となった理由として考えられます。
このように銀鉱株ETFは、時に銀価格以上のリターンを狙える可能性があるものの、市況や銀鉱業分野の動向、企業業績などによっても影響する点で、より値動きの予想が複雑になることに注意が必要です。
取引量はSLVと比較すると少ないものの、十分な流動性を有しています。
またSILも、新NISA成長投資枠を利用可能です。
NISA口座でSILを購入する場合、楽天証券・SBI証券・マネックス証券などで、売買手数料が無料になります。
タイプ別!おすすめ銀ETF銘柄
以上の内容から、タイプ別におすすめの銀ETF銘柄を振り分けてみましょう。
NISAを利用してETFを購入したい人におすすめなのは以下の2商品です。いずれも新NISAの成長投資枠の対象です。
【1542】 純銀上場信託 (現物国内保管型) | 【SLV】 iシェアーズ シルバー・トラスト | |
---|---|---|
上場種別 | 国内ETF | 米国ETF |
対象指数 | 「グラム・円」単位の銀地金の理論価格 | ロンドン地金市場協会の銀価格 |
通貨 | 日本円ベース | 米国ドルベース |
取引価格(25/1/17) | 14,145.0円 | $27.61 |
過去5年 リターン | 年率19.25% | 年率10.41% |
経費率 | 0.55% | 0.50% |
為替の影響を織り込んだ円ベースでの運用を希望するなら国内ETFを、為替の動向に合わせて自分のタイミングで円転したいなら海外ETFを選ぶのが良いでしょう。
投資コストの安さを重視したい方は、【SLV】の方がコスト面では有利です。
※海外ETFには、国内の取引手数料(売買手数料)の他に、円⇔外貨の為替手数料や、現地証券取引所手数料もかかります。ただし、SBI証券や楽天証券などでは、円⇔米ドル間の為替手数料が無料に出来るほか、現地証券取引手数料も以下のように気になる額ではないので大きな障害にはならないでしょう。
▼海外ETF(米国)株売却時のみ、別途現地手数料が発生
現地手数料(24年5月20日時点):ドルの約定代金×0.0000278米ドル(米セント未満切り上げ)
例:約定金額が2500ドルなら 0.0695ドル(= 約7セント)
NISAを利用しないのであれば、信託報酬の安い以下の2商品がおすすめです。
【1673】 WisdomTree 銀上場投資信託 | 【SLV】 iシェアーズ シルバー・トラスト | |
---|---|---|
上場種別 | 国内ETF | 米国ETF |
対象指数 | ロンドン地金市場協会の銀価格 | ロンドン地金市場協会の銀価格 |
通貨 | 日本円ベース | 米国ドルベース |
取引価格(25/1/17) | 4,380.0円 10口から購入可 | $27.61 |
過去5年 リターン | 年率19.45% | 年率10.41% |
経費率 | 0.49% | 0.50% |
両者の運用コスト差は、年間0.01%です。
例えば100万円を運用していた場合、年間100円のコスト差が生じるイメージです。
このコスト差よりも、最低投資額の安さや、ドルベースでの運用を優先したい方は【SLV】を選ぶと良いでしょう。
銀以外に、複数の貴金属に分散して投資したい人には、【1676】WisdomTree 貴金属バスケット上場投資信託が選択肢になるでしょう。
運用資産の6割程度を金が占めているので、金のインフレ耐性やリスク分散効果の恩恵を受けたい人にもおすすめです。
NISAの成長投資枠も利用できるので、資産運用を効率的に行いたい人にも適した商品と言えます。
【1676】WisdomTree 貴金属バスケット上場投資信託 | |
---|---|
上場種別 | 国内ETF |
対象指数 | ロンドン白金・パラジウム市場およびロンドン地金市場協会 に基づく貴金属価格 |
通貨 | 日本円ベース |
取引価格 (25/1/17) | 25,010.0円 |
過去5年リターン | 年率11.83% |
経費率 | 0.44% |
銀ETFに投資するメリット!銀を買う理由は何?
日本で購入できる銀ETFの種類や特徴について理解したところで、次に銀ETFにはどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
証券会社で簡単に購入できる
銀ETFは、証券会社に取引口座を開設すれば、オンライン取引画面から数クリックで購入できます。
※銀行ではETFの購入はできません。
現物銀のように保管場所や管理の手間が不要で、さらに、市場で取引されるため流動性が高く、必要なときにすぐ現金化できる点もおすすめです。
少額の資金でも始められる
銀現物(銀地金)を購入したい場合、一部の販売業者では100g単位や500g単位でも購入も可能ですが、通常は1kg単位での販売が一般的です。
銀の1kgあたりの価格は、約17万円程度(2025年1月21日時点)で、加えて数千円程度の販売手数料も掛かります(自宅保管であれば送料も発生)。
一方、銀ETFであれば、4000円程度の少額から銀への投資を始めることが可能です。
投資コストが抑えられる
SBI証券や楽天証券などの証券会社では、ETFの取引手数料が無料になる場合も多いです。
また銀ETFの信託報酬も年0.5%前後で済むため、銀の現物投資と比べるとコスト負担を大幅に抑えることが出来ます。
※各1キログラム分の取引想定
※2025/1/21時点における概算
【1542】純銀上場信託(現物国内保管型)の場合
- 取引手数料:SBI・楽天証券などでは無料で取引も可能
- 売買スプレッド:約50円(変動)
- 信託報酬:775円程度/年
→年間コスト:825円程度
銀地金への投資の場合(※業者によるため目安として)
- 購入手数料:6600円
- 売却手数料:6600円
- 売買スプレッド:約6500円
- 保管費用:約4000円/年
→年間コスト:23700円程度
リアルタイムで取引可能で流動性も高い
銀ETFは証券取引所に上場しているため、取引時間中にリアルタイムで売買が可能。投資資金の引き出したい場合には、短期間で簡単に現金化することができます。
※ただし、自分が売りたい価格で購入したいと思う人が出て来なければ、すぐに売れない場合もあります。
流動性の低いETF銘柄(出来高が少ない/スプレットが大きいなど)は、買い手が見つかりにくく、売却時に希望する価格で売れない場合があるため、出来るだけ市場が活発で、取引量が多いETFを選ぶのがおすすめです。
リスクの分散効果が期待できる
銀は金と同様に、リスクオフ局面において資本の退避先として注目される「安全資産」で、市場全体が不安定な時や経済危機などの際に、購入が増える傾向にあります。
その結果、銀や金の価格は、株式や債券とは異なる値動きになりやすく、これらを組み合わせることで、ポートフォリオ全体のボラティリティを低減する効果が期待できます。
また、ETFでは「空売り」をすることもできるので、市場の不調時における下落リスクを軽減させることも可能です。
インフレヘッジ効果が期待できる
銀は工業用途や宝飾品需要に加え、安全資産としての性質もあるため、インフレ時には価格が上昇しやすいのが特徴です。
そのため銀の価格に連動する銀ETFに投資することで、インフレによる資産価値の目減りを防ぐことが期待できます。
銀市場の見通し(将来)が明るい
銀は電子機器や太陽光パネル、電気自動車(EV)、医療用具など多岐にわたる産業分野で利用されており、今後も需要増加が期待されています。
一方、銀の地球全体の埋蔵量は有限で、可採年数(現在の採掘ペースでどのくらい採掘可能か)は約20年程度と推定されています。
このように、需要の多様性と供給制約が裏付けとなり、銀市場の将来性は明るいと評価されています。
銀市場の将来性については、後述の章「シルバー価格の推移チャートと今後の見通し」でより詳しく解説します。
銀ETFに投資するデメリットと注意点は?
反対に、銀ETFには特有のリスクや注意すべきポイントも存在します。
ゴールドよりも価格の変動幅が大きい
銀は工業用途の需要が全体の半数以上を占め、経済や特定産業の動向によって価格が大きく変動します。
また、銀市場は金市場より規模が小さく(≒流動性が低く)、大口注文や情報の偏りに価格が敏感に反応します。
以下は、銀価格に連動するETF(【1673】WisdomTree 銀上場投資信託)と、金価格に連動するETF(【1672】WisdomTree 金上場投資信託)の過去15年間の値動きを表した推チャートです。
短期的にも長期的にも、銀価格の変動が大きめであることが見て取れます。

これらの要因により、銀価格は変動が大きくなりやすいため、リスク対策や守りの資産としては、金に劣ると評価されています。
景気動向の影響を受けやすい
銀は工業需要が全体の50%以上を占めているため、景気が悪化すると工業需要が落ち込み、銀価格が大幅に下落する可能性があります。
一方、金の場合、工業需要は7%ほどと少なく、主には投資需要・装飾金需要・中央銀行の保有によって価格が底支えされているため、銀よりも景気の影響を受けにくいと言えます。

引用:Gold World Counsil
インフレへの耐性が金ほど高くない
銀も金と同じく「インフレヘッジ資産」として購入されますが、工業需要に左右される部分が多いため、純粋なインフレ対策としての効果は金より劣る傾向があります。
流動性が低い商品もある
銀ETFは他の大規模な株式ETFや金ETFと比較すると流動性が低い場合があり、これにより、希望の価格で売買できず損失が発生する可能性があります。
そのため、銀ETFを購入する際は、出来高やスプレッドの幅などを事前に確認することがおすすめです。
基本的に分配金が無い
銀ETFの多くは配当金を支払わないため、収益は価格の上昇に依存します。
定期的な収益を期待できないため、安定した収入を期待する投資家には向いていない場合があります。
手数料が割高な場合がある
銀ETFの管理手数料(信託報酬)は、他のETFと比較して高めに設定される場合があります。
特に長期間保有する場合、運用コストが総リターンを押し下げる可能性があります。
日本で購入できる銀ETFの信託報酬は0.5%前後ですが、株式型ETFの信託報酬は0.05%~0.06%あたりの銘柄も多く、銀ETFの10分の1のコストで投資可能です。
為替リスクが伴う
銀は基本的にドル建てで取引されるため、海外ETFだけでなく国内ETFでも為替の影響を受けます。
銀の価格が上昇しても、円高になれば投資成果が目減りする可能性がありますし、逆に円安になれば利益が増えることもあります。
このように、銀ETFへの投資には、他の資産にはない特性があり、リターンを期待できる反面、リスクやコスト面での注意が必要です。
リスク対策が目的であれば、銀よりも金の方がリスクヘッジ効果は高いと言えるでしょう。
シルバー価格の推移チャートと今後の見通し
では、銀市場をより詳しく理解するために、これまでの銀の価格推移を見てみましょう。
以下は、世界的な銀市場の基準価格として参考にされている、COMEX(ニューヨーク商品取引所)の銀先物価格のチャートで、銀1トロイオンスあたりの米ドル価格を示しています。
チャートからも銀価格は大きな変動を繰り返してきたことが分かりますが、変動の主な要因は以下の通りです。
- 1980年:一部投資家の投機により、銀価格は1トロイオンス50ドル近くまで急騰。
- ~2008頃:投機熱の沈静化と経済安定により、安全資産としての需要が減少し長らく横ばいが続く。
- 2008~2011年:金融危機を受け、安全資産として再度注目され、2011年に50ドル近くまで上昇。
- 2011年以降:金利上昇やインフレ低下、中国経済の成長鈍化、ドル高の影響で20ドル以下に低迷。
- 2020年:コロナショックやインフレ懸念を背景に、一時30ドル近くまで上昇。
では、今後の銀市場はどのように見通すことが出来るでしょうか。
今後の銀市場の見通しを考えるには、価格変動を左右する以下の要因を把握することが重要です。
金利動向 | 金利上昇→銀価格下落(安全資産の魅力低下) 金利低下→銀価格上昇(安全資産の需要増加) |
---|---|
インフレーション | インフレ進行→銀価格上昇(インフレヘッジ需要増加) インフレ後退→ 銀価格下落(需要減少) |
為替動向 | ドル高→銀価格抑制 ドル安→銀価格上昇 |
銀の供給量 | 供給過剰→銀価格下落 供給不足→銀価格上昇 |
工業需要 | 工業需要増加→銀価格上昇 工業需要減少→銀価格下落 |
景気動向 | 好景気→(工業需要増加)→銀価格上昇 不景気→(工業需要減少)→銀価格下落 |
地政学リスク | リスク増大→銀価格上昇(安全資産需要増加) 安全時→銀価格下落(リスク回避需要減少) |
これらの要素に影響を受け、銀価格は短期的にはボラティリティが高くなりますが、一方で、工業需要や供給の制約によって中・長期的には成長の可能性が期待されています。
特に、再生可能エネルギー分野での太陽光パネル需要や、電気自動車や電子機器の普及は、銀の需要を押し上げる重要な要因となります。
一方で、銀の採掘コストの上昇や産出量の減少、リサイクル銀の供給不足も価格上昇に繋がる可能性があります。

出典:The Silver Institute|World Silver Survey 2024
これらの要因を踏まえると、銀価格は中・長期的に緩やかな上昇基調を維持する可能性が高いと言えます。
(※ただし、代替材料や技術革新による需要抑制のリスクもあり、市場の動向を継続的に注視する必要があります。)
さらに、金と銀の価格は長期的に一定の相関関係を持つため、金価格を銀価格で割った「金銀比価(GSR)」を分析することで、銀が割高か割安かを判断するヒントになります。
GSRは、金1オンスの価格を銀1オンスの価格で割った値で、金と銀の相対的な価値を示す指標です。
一般的に、GSRが高いと銀が割安、低いと銀が割高と解釈されます。
GSRは過去50~80の範囲内で推移しており、これを基準とすると、GSRが80を超えている現在は、銀価格は割安と考えられ、投資対象として注目されやすい状況にあると言えるでしょう。
銀ETFの購入ならSBI・楽天証券がおすすめ
銀ETFを取引する証券会社を決める際は、取引手数料や取扱銘柄、サービス内容などを総合的に考慮する必要があります。
コストの安さ・投資機会の多さ・投資のしやすさの点でおすすめなのは、SBI証券と楽天証券です。
・銀スポット取引・銀積立・銀ETF・銀先物・銀CFD取引が可能(銀の現物転換も可)
・NISA口座なら国内外ETFの売買手数料無料(一部の海外ETFは一般口座でも買付手数料が無料)
・インターネットコースなら、海外ETF利用時の米ドル/円(買付時・売却時)の為替手数料も無料
・銀スポット取引・銀積立・銀ETF・銀先物・銀CFD取引が可能
・NISA口座なら国内外ETFの売買手数料無料(一部の海外ETFは一般口座でも買付手数料が無料)
・海外ETF利用時の米ドル/円(買付時・売却時)の為替手数料も無料
SBI証券と楽天証券では、銀ETF以外に以下のような銀の取引方法が利用できます。
SBI証券 | 楽天証券 | |
---|---|---|
銀スポット取引 | 買付手数料:約定代金の1.65%(税込) 売却手数料:無料 | |
銀積立 | 買付手数料:買付代金の1.65%(税込) 売却手数料:無料 | |
銀先物 | 取引手数料 (税込) 片道1枚82.5円 | 取引手数料 (税込) 片道1枚275円(税込) |
銀CFD | 取引手数料 (税込) 330円/枚 | 取引手数料 無料 |
銀の現物転換 | 可能 | 不可 |
銀ETF以外におすすめの投資先は?「ヘッジファンド」の魅力を解説
株や債券以外にも投資機会を広げたいと考えている方が、銀投資の他に検討したいのが、高い収益力とリスクヘッジ力を兼ね備えた「ヘッジファンド」です。
ヘッジファンドでは、投資家から運用資金を預かり、高度な運用スキルを持つプロフェッショナルが運用を代行します。

具体的には、株式や債券、不動産、コモディティ、オプションなど、多様な資産に分散投資しながら、一般的な投資信託では利用制限の掛かるような高度な投資戦略を用いて、上昇局面でも下落局面でも利益を狙える運用を行います。
個人投資家が直接アクセスしにくい特殊な市場や投資機会にもアクセスするため、二桁を超える高いリターンが期待できるのがヘッジファンド最大の魅力です。
また高い投資技術と柔軟性を用いたリスクヘッジや、下落相場での耐性の強さでも知られています。
株や債券などの伝統資産や金銀の他に「オルタナティブ投資」のヘッジファンドを併用することで、投資ポートフォリオ全体のリスクを抑えながらよりリターンを追求できます。
特におすすめのヘッジファンドは、次の通りです。
(ファンド名を押下すると、各社公式サイトをご覧いただけます。)
ハイクア インターナショナル 最低投資額:500万円 | ・固定年利12% ・運営歴10年以上 ・安定した事業基盤 ・透明性の高さ ・成長著しい日系ベトナム企業への融資 ・資料請求のみの問い合わせもOK |
---|---|
アクション 最低投資額:500万円 | ・2023年設立 ・多様な戦略(バリュー株/事業投資/ファクタリング/Web3事業) |
※アクションは運営年数が少ないため、記載なし(現時点での年利:アクション18%)

本記事の解説まとめ
本記事では、銀ETFの基本やおすすめ銘柄、メリット・デメリット、将来性、さらに購入に適した証券会社を解説しました。
金と同様、銀も「安全資産」の一つであるため、銀ETFを購入することで、投資ポートフォリオ全体の価格変動リスクを緩和させたり、インフレや通貨リスクから資産を守る効果ができます。
ただし銀には、景気や市場の影響を受けやすいという、金にははない特性を持つため、「安全資産」としての効果はやや限定的になる点は留意しておきましょう。
世界中の市場が複雑に絡み合う今だからこそ、株式や債券に加え、不動産や金銀などのコモディティ、さらにはヘッジファンドといったオルタナティブ投資を上手に組み合わせ、安定的かつ効率的に資産を育てていきましょう。
