リート(REIT)は、手軽に不動産投資ができ、4%を超える高い利回りが魅力の不動産投資信託商品です。
しかし同時に、REITには不動産投資信託特有のリスクやデメリットがあり、「おすすめしない」・「やめとけ」などの否定的な意見もあるため、投資に不安を感じる方も多いでしょう。
そこで本記事では、REITがおすすめしないと言われる11つの理由を詳しく解説し、メリットとデメリットをしっかり理解した上で、賢い投資判断を行うためのポイントを紹介します。
- リート(REIT)の仕組みや種類
- リートのデメリット(おすすめしないと言われる11つの理由)
- リートに投資するメリット
- リートがおすすめな人とおすすめしない人
- リート以外のおすすめの投資先5選
- リートへの投資方法・注意点・人気銘柄・今後の見通しなど
不動産投資に興味がある方や、投資先を探している方はぜひ参考にしてください。
リート(REIT)とは?基本の仕組みを解説
リート(REIT)が自分に合った投資先かを見極めるためには、その仕組みを正確に理解することが重要です。
まずは簡単に、リートの仕組み、種類、成り立ちなどを見ていきましょう。
リートの仕組み
※リートの仕組みについて既によくご存じの方は、
こちらの章「リートがおすすめしないと言われる11つの理由(リスクとデメリット)」
からお読みいただいてもOKです。
リート(REIT)とは、「Real Estate Investment Trust」の略で、日本語では不動産投資信託と訳されます。
不特定多数の投資家から集めた資金で、オフィスビル、商業施設、マンション、物流施設、ホテルなどの様々な不動産を購入し、そこから得られる賃貸収入や売却益を投資家に分配する金融商品です。
投資家は個々の物件を所有するのではなく、リートを購入することで間接的に不動産に投資します。
リートの誕生と歴史
リート(REIT)は1960年アメリカで誕生しました。
元々、機関投資家や富裕層の個人のみが投資可能であった商業用不動産を、REIT法の制定で一般投資家でも少額から投資できるようにしたのが始まりです。
日本では2000年に投信法が改正され、「J-REIT(Japanese REIT)」という名称で運用が開始されました。
リートの登場により、広範な投資家層に不動産への投資機会が提供され、日本を含む世界のリート市場は大きく拡大しました。
2023年4月時点での世界の主なリート市場の時価総額は約193.4兆円、J-REIT市場の時価総額は約15.2兆円(アメリカに続き世界第二位)と報告されています。
リートの種類
リートは、通常、数十を超える不動産を保有して運用しますが、投資対象となる不動産の種類によって、単一用途特化型リートと複数用途型リートに大別されます。
単一用途特化型リート | 複数用途型リート | |
---|---|---|
概要 | 1種類の不動産に特化して運用 | 異なる種類の複数の不動産に投資 |
投資対象 | ・オフィス特化型REIT ・商業施設特化型REIT ・住居特化型REIT ・物流施設特化型REIT ・ホテル特化型REIT | ・2種類の不動産「複合型REIT」 ・3種類以上の不動産「総合型REIT」 |
特性 | 市場予測・成長市場への集中がしやすい一方、リスクの分散性は低い | リスクの分散により安定運用が期待できる一方、収益の最大化は難しい |
銘柄例 | (8951)日本ビルファンド投資法人 | (3462)野村不動産マスターファンド投資法人 |
日本のリート市場は、物件の分散投資が進んでおり、投資対象となる不動産の種類も、住宅・商業施設・オフィスビル・物流施設・ホテル・医療施設など多様です。
単一用途特化型リートではこのうち1種類の不動産を投資対象とし、複数用途型リートは、例えば「物流施設+商業施設」、「オフィス+住居+商業施設+ホテル等」といった具合で、異なる用途の不動産に分散投資を行います。
リートに投資する方法
日本国内でリートに投資する方法は、3パターンあります。
株式のように証券取引所に上場している個別銘柄、複数のREIT個別銘柄に分散投資するETF、同じく複数のREIT個別銘柄に分散投資する投資信託(REITファンド)の3パターンです。
前述の「J-REIT(Japanese REIT)」は、この不動産投資法人が発行するリート個別銘柄(投資証券)のことを指します。
J-REITは証券取引所に上場しているため、証券会社を通じていつでも気軽にリート(投資証券)を購入可能。
2024年9月時点では、58社の投資法人が発行したリート個別銘柄が東京証券取引所に上場しています。
参考:不動産投信情報ポータル
一方、ETFや投資信託は、複数のリート個別銘柄に分散投資するファンドで、個別銘柄に投資するよりもより分散性の高い運用が期待できます。
またETFと投資信託では、両方とも、投資家に代わって投資の専門家が、複数のリートを選択して分散投資してくれるため、初心者の方にはより利用しやすい投資方法でしょう。
リートをおすすめしない理由(リスクとデメリット)
個人投資家の資産運用先として人気の高まるリート(REIT)ですが、おすすめしない、やばい、儲からない、やめとけなどのマイナスな意見も多くあります。
続けては、なぜリートがおすすめしないと言われているのか、リートに潜むリスクやデメリットついて徹底解説します。
おすすめしない理由1. 元本割れリスク
元本割れリスクとは、投資元本(最初に投資した金額)が運用により減少してしまうリスクのことです。
リートには、銀行貯金のような「元本保証(運用期間中に元本の額が減らない)」はなく、市場価格は日々変動しているため、運用中は常に元本割れリスクに晒されます。
例えば、売却時のリート価格が購入時よりも大幅に下落している場合、運用中に得た分配金を含めても、元本割れを引き起こしてしまう場合があります。
リート価格は、不動産価格・賃貸条件・空室率・金利・経済状況・自然災害など、様々な要因により日々変動しているため、株式や他のリスク資産と同様に、元本割れにより損失が発生するリスクがあることを理解しておかなければなりません。
また海外リートに投資する投資信託(リートファンド)の場合は、為替変動による影響も受けます。
投資信託の運用会社は、海外リートを日本円以外の外貨で購入し、日本の投資家に向けて円で販売します。
そのため、円安が進むと外貨の価値が上がり、円換算での投資信託の評価額や分配金が増加。逆に、円高が進むと外貨の価値が下がり、円換算での評価額や分配金が減少してしまいます。
おすすめしない理由2. 不景気時の気弱性
リートは、景気の影響を受けやすい金融商品として知られており、特に景気後退時にはパフォーマンスが悪化しやすくなります。
以下の表は、日本株・J-REIT・国内債券のボラティリティの推移を示したものですが、リーマンショック(2008年~2009年)やコロナショック(2020年)といった景気後退時には、株より価格変動が大きくなっています。
- 賃料収入の減少
景気が悪化すると、企業や個人の経済状況も悪くなり、不動産の賃料収入が減少。
例:企業のオフィススペースの縮小、テナントの撤退など - 不動産価格の下落
景気後退時には不動産価格も下落傾向に。不動産価値の低下はリートの資産価値の減少に直結し運用が悪化。 - 空室率の上昇
景気が悪化すると、商業用不動産やオフィスビルの空室率が上昇。テナントの倒産、契約を更新しない、空室が増えるなどの理由でリートの賃料収入が減少。 - 資金調達の困難さ
リートは不動産の購入のために借り入れを行うが、景気後退時には借入コストが増加する場合がある。また運用会社の信用が悪化すると、新たな資金調達が難しくなり運用が悪化。
このように、リートは景気後退に対する脆弱性があり、投資家のリスクが高まることがから「おすすめしない」と言われています。
おすすめしない理由3. 金利に敏感
リートは金利の動向にも大きく影響を受ける商品です。
リートの発行元である不動産投資法人は、多くの場合、不動産を購入するために金融機関から借入を行うため、金利が上がると借入コスト(利子)が増加し、収益が圧迫されます。
収益の悪化は分配金の減額を引き起こし、分配金の減額はリート価格の下落に繋がります。
また金利が上昇すると、銀行預金や国債などの低リスク資産に資金が流れやすくなり、相対的にリートへの資金流入が減るため、リート価格が減少してしまう場合があります。
以下は、東証REIT指数とTOPIX(東証株価指数)の推移を示した表ですが、東証REIT指数は、国内金利が上昇し始めた2022年頃から下落基調となっています。
基本的には株価も金利と逆相関ですが、東証REITの方が金利変動にも強く反応している様子が見て取れます。
おすすめしない理由4. 災害リスク
不動産投資特有のリスクとして「おすすめしない」と言われる理由となっているのが、災害や事故のリスクにより不動産価値が毀損してしまうリスクです。
リートは現物不動産に投資しているため、地震、台風、洪水、火災などの自然災害や、重大な事故が発生した場合、物件の損害や運営コストの増加、賃貸収入の減少、不動産価格の下落などが起こる場合があります。
言わずもがな、これらの弊害はリート価格の下落や分配金の減少に直結します。
火災保険や地震保険などである程度のリスクは軽減できますが、完全に防ぐことはできないため、リスクの一つとして考慮する必要があります。
2011年3月11日に発生した東日本大震災の際には、J-REITが投資する不動産への被害は限定的であったものの、J-REITは一時大きく下落しました。
災害リスクを回避するには、リスク分散戦略(異なる地域の不動産に分散投資しているリートを選ぶ)や保険の適用範囲などを確認しておくことが重要です。
おすすめしない理由5. 分配金の減額
リートは、保有期間中に定期的に受け取れる分配金が魅力の一つですが、常に安定した分配金を受け取れるとは限りません。
前述のような様々な要因によってリートの運用パフォーマンスが悪化すれば、分配金が減額されてしまうからです。
賃貸収入‥空室率の増加や賃料の値下りによる賃貸収入の減少
不動産価格‥不動産価格下落による、売却益の減少や売却損
金利変動‥金利上昇による借入金の返済コストの増加
災害‥災害や事故による不動産の修繕費や管理費の増加
景気‥経済不況や不動産市場の低迷による賃貸需要の低下や物件価格の下落
制度変更‥税制や規制の変更による運用コスト増加や利益の減少
公募増資‥※公募増資による分配金の希薄化
※公募増資とは、新規不動産の取得や既存借入金の返済などを目的として、リートが追加の資金を調達(新たな投資口の発行)をすることです。投資口の数が増えるため、一口あたりの分配金が希薄化してしまう場合があります。
2020年新型コロナウイルスのパンデミックが発生した際には、ホテル特化型リートの「インヴィンシブル投資法人」が分配金の98%減を発表しました。
おすすめしない理由6. 上場廃止や運営会社(不動産投資法人)の倒産リスク
REITは証券取引所に上場しているため、上場維持の基準を満たせなくなった場合、上場廃止になる場合があります。
上場廃止基準は様々(参考:東京証券取引所のリート上場廃止基準)ですが、特に注意したいのは、純資産の激減・分配金の無配などです。
上場廃止の決定から1か月間は売買が可能ですが、ネガティブな理由による上場廃止の場合は、リートの価格が下落し流動性が低下するため、売却が困難になる場合があります。
リートETFも証券取引所に上場しているため、ETFが上場廃止基準に抵触した場合には上場廃止になる場合があります。
投資信託は非上場なので上場廃止はありませんが、「繰り上げ償還」という形で不本意価格で運用が打ち切られる場合があります。
上場廃止リスクの他にも、リートを運営する不動産投資法人の倒産リスクにも注意が必要です。
リートは、運用利益の殆どを投資家に分配する(利益の90%超を投資家に分配するなどの要件を満たせば法人税が免除される)ため、不動産投資法人に手元に残る利益剰余金が少なく、そもそも資金繰りが逼迫しやすいという性質を持っています。
不動産運用の不振や経営判断の誤り、借入金の増大などにより経営不振に陥り倒産してしまうと、REIT価格が大きく毀損し、投資家に対する分配金が減少したり、無配になる可能性があります。
投資法人が保有する不動産を売却して資金を作ったとしても、債務の状況次第では投資家が元本を100%回収できない場合もあるでしょう。
リートの上場廃止や投資法人の倒産は、これらのリートに分散投資するETFや投資信託の価格にも間接的に影響を与えるため、いずれの投資方法を採るにせよ注意が必要です。
- LTV(総資産有利子負債比率)が高い
保有資産に占める借入金の割合を示すLTVが60%を超えていると財務健全性が低いと判断される。 - NAV(Net Asset Value)倍率が高い
投資口価格を投資証券一口あたりの純資産額で割ったNAV倍率が、1以上であると割高と判断される。 - 時価総額が小さい
時価総額が大きい銘柄は、つまり投資している人が多いため、倒産や上場廃止リスクの低さを計る目安になる。 - 第三者機関による格付けが低い
格付けが高いほど債務不履行になるリスクが低い。AA格以上の銘柄は日銀の買い入れ対象となっておりリスクは低め。
2008年10月、J-REITで初めて「ニューシティ・レジデンス投資法人」が破綻しました。
2008年のリーマンショックによる世界的な金融危機により、新たな資金調達の難航、不動産価格の低下、空室の上昇による物件の収益性低下などから資金繰りが厳しくなったためと言われています。
2008年2月期時点の同法人のLTVは54.8%、11月の上場廃止前には投資口価格が約50%下落しました。
同法人は「ビ・ライフ投資法人(現・大和ハウスリート投資法人)」に吸収合併され、その際投資家には、1口あたり0.23口のビ・ライフ投資法人投資口が割り当てられました。
おすすめしない理由7. 自己資金のみの投資(レバレッジを活用できない)
レバレッジ(Leverage)は、「てこの原理」を意味し、投資の世界では借入を利用して自己資金の何倍もの取引きを行い、利益効率を高める方法を指します。 つまり、少ない自己資金で効率的に資産を増やすことが出来るのです。
現物不動産投資の場合、投資家は不動産購入のために金融機関でローンを組んで融資を受けられるため、レバレッジ効果が期待できます。
しかし、リートに投資する場合、個人投資家は金融機関から融資を受けることはできないため、レバレッジは活用できず、あくまで自己資金に相応する利益しか期待することはできません。
おすすめしない理由8. 複利運用しにくい
リート投資では、分配金が自動的に再投資されないため、効果的な※複利運用ができない点もデメリットとなります。
投資で得た利益を元本に追加して再投資することで、元本と利益の両方に対して利益が生まれ、利益の増幅スピードを加速させることができる運用方法。運用期間が長期になるほど投資効率が上がる。
投資信託の場合は、ファンドを購入する際に分配金を「再投資」するのか「受取」にするのかを選択できます。
しかし、Jリート(個別銘柄)やETFには、このような自動的に再投資できる仕組みがなく、分配金は全て現金で支払われます。
Jリートで複利運用をするには、受け取った分配金で投資家自身が再度リートを購入しなければなりませんが、以下のような理由から、実際にはスムーズで効率的な複利運用は困難です。
1. 少額の分配金では新たにリートを購入する資金に達しないことが多い
2. リートを購入する度に証券会社の取引手数料が掛かる
3. 分配金は受け取る度に20.315%の税金が引かれるため、再投資に使える資金が減る
比較的高い分配金を受け取れるリートですが、長期的な資産形成に視点を当てると、効率的な投資方法とは言えないのです。
おすすめしない理由9. 節税効果が薄い
リターンを最大化や効率的な資産形成を目指す上で、節税は非常に大切な要素ですが、残念ながらリートには節税効果は殆どなく、「おすすめしない」「儲からない」などと言われる原因になっています。
- 株の配当金とは異なり、リートの分配金には配当控除がない
- 不動産の直接保有とは異なり、減価償却を活用して所得を圧縮することが難しい
株式の配当金は、二重課税(企業が法人税を支払い、その後配当金を受け取った個人にも所得税が課される)が発生するため、配当控除が適用され、所得税と住民税が減額されます。
リートの場合は、投資法人が投資家に利益の90%超を分配する代わりに法人税が非課税になる仕組みを採っており、二重課税は発生しません。
そのためリートの分配金には配当控除が適応されず、通常通り20.315%の所得税と住民税がかかるのです。
またリートは、現物不動産投資と比べても節税効果が少ないと言えます。
現物不動産投資では建物の減価償却を行い、課税所得を減らすことができます。また修繕費や管理費、ローンの利息などを経費として計上できたり、損失を給与所得と損益通算することで課税所得を圧縮できます。
リートには現物不動産投資のような節税手段はありません。
リートの効果的な節税方法は、個人投資家向けの税制優遇制度であるNISAの利用に限られるでしょう。
リート(J-REIT) | リートETF | 投資信託(リートファンド) |
---|---|---|
分配金‥税率20.315%(源泉徴収) 売買益‥税率20.315%(申告分離課税) ※売買益は、特定口座の「源泉徴収あり口座」なら申告不要。 |
おすすめしない理由10. 法律や規制の変更による影響
リートは、法律や規制の変更による影響を受けやすい投資商品でもあります。
【税制の変更】
リートにかかる税率や分配金に対する課税制度が変更されると、投資家のリターンが直接影響を受けます。例えば、税制優遇の撤廃や引き下げが行われた場合、収益が減少する可能性があります。
【不動産関連法の変更】
賃貸契約や不動産開発に関わる規制が変更されると、リートが保有する不動産の運営や新規物件取得に影響が及びます。例えば、建築基準の強化や賃貸ルールの変更は、管理コストの増加や収益減少を引き起こす可能性があります。
【金融規制の強化】
金融機関がリートに融資する際の基準が厳しくなると、資金調達が困難になり、不動産取得や運用が制限されるリスクがあります。
おすすめしない理由11. 手数料がかかる
リートに投資するには手数料が掛かります。銀行預金や国債の購入には基本的に手数料は掛からないため、投資に手数料が掛かることは一種のデメリットになります。
【Jリート】
売買手数料 (購入/売却時) | 約定金額100万円以下の場合、0円~660円程 |
---|
【リートETF】
売買手数料 (購入/売却時) | 約定金額100万円以下の場合、0円~660円程 |
---|---|
信託報酬 (保有時) | 年0.15%~0.75%程 |
【リート(投資信託)】
購入時手数料 (購入時) | 購入金額の0~3%程 |
---|---|
信託財産留保額 (解約時) | 基準額の0~0.3%程 |
信託報酬 (保有時) | インデックスファンド:年0.1%~0.8%程 アクティブファンド:年0.8%~3%程 |
ただ現状、手数料の掛かる金融商品でしか高い利回りは期待できないため、一定の手数料の負担はやむを得ない状況です。
リートやリートETFに掛かる証券会社の「売買手数料」は、ネット証券などで無料になる場合があります。また投資信託にかかる購入手数料や信託財産留保額は無料であるファンドも多くあります。
投資コストは、リターンを減少させる要因となるため、事前にコストを把握し、手数料の少ない証券会社や銘柄を選ぶことが重要です。
以上が、リート(REIT)がおすすめしないと言われる11つの理由でした。
不動産投資の敷居が下がる!リート(REIT)投資のメリット
ここまで「リードはやばい・おすすめしない」などの不評のワケを解説しましたが、反対に、リートはどのような投資メリットがあるのでしょうか。
1. 手間を掛けずに手軽に不動産投資ができる
実物不動産投資は、レバレッジを利用して自己資金以上の投資ができるのが魅力ですが、一方で、投資に様々な手間暇が掛かること、気軽に売買できないことがネックになります。
リートを通じた間接的な不動産投資の場合は、自分で投資先を探す必要もない、不動産の管理や運用を不動産投資法人に任せられる、証券取引所で株式のように手軽に売買できるなど、上記のような負担を追うことなく手軽に不動産市場に投資することができます。
2. 少額から複数の不動産に分散投資できる
実物不動産への投資は、価格が高額なため、複数の物件に投資するには多額の自己資金(数百万~数千万円)に加え、借り入れも必要です。
そのため個人投資家が複数の不動産に分散投資するのは容易ではなく、リスクが集中しがちです。
その点、リートは数万円~数十万円(投資信託やETFを利用すれば1000円以下)から投資できます。
さらにリートは複数の物件に分散してポートフォリオを組んでいるため、個人投資家でも少ない資金でリスクを分散をしながら不動産投資に挑戦できます。
また個人では投資が難しい、商業施設やオフィスなどの不動産に投資できるのもリートの魅力でしょう。
3. 実物不動産よりも流動性が高く現金化しやすい
実物不動産を売却するには、買い手を探すための市場調査、物件の評価、契約の交渉や書類作成、そして最終的な取引の完了まで多くの手続きが必要です。
このプロセスは数週間から数カ月かかる上、長期間買い手が見つからず現金化できない場合もあります。
リートは証券取引所に上場しており、多くの投資家が市場に参加しているため、投資家はリアルタイムで市場価格を確認し、売却したい場合は通常数日以内に換金できます。
また実物不動産では、通常資産の一部だけを売却することはできませんが(例:一つの家の一部だけを売ることはできない)、リートは1口単位から購入・売却が可能で、投資家は必要な分だけ柔軟に現金化できます。
4. 比較的高い利回りを狙える
リートへの投資で得られる利益は、定期的に受け取る分配金と、売却時に得られる売却益です。
Jリートの平均的な年間利回りは5%~7%とも言われており、リートの安定した分配金(平均4%程)が、トータルリターンを主に支えています。
分配金利回りの目安 | 分配金利回り幅 (2024年10月時点の過去1年利回り) | |
---|---|---|
Jリート | 4%程 | 3.5%~9%程 |
リートETF | 4%程 | 2.9%~8.5%程 |
投資信託 | 国内・海外とも 6%程 | 国内REIT:0~28%程 海外REIT:0~24%程 |
リートを発行する不動産投資法人には年2回の決算期があり、分配金は決算から3か月以内に払い出されます。
不動産投資法人によって決算月は異なるため、決算期の異なる複数のリートに投資すれば、毎月分配金を受け取ることも可能です。
株式の配当金利回りが0.6%~2.6%程度(2024年9月時点)であるのと比較すると、定期的な配当収入に重きを置く方にとって、リートは魅力的な投資先でしょう。
また分配金以外にも、リート価格の日々の変動を利用して売却益(値上がり益)を期待することもできます。
ただし、以下の図のように、Jリートのリスクはリターンに対しては高めで、国内株式のリスクと大差はないため、元本割れリスクには細心の注意を払う必要はあります。
5. NISAを活用できる
NISA(少額投資非課税制度)とは、ご存じの通り、株式や投資信託などの金融商品で得た売却益や配当金などが、一定の金額まで非課税になる制度です。
長期的な資産形成には欠かせないNISAですが、資産運用に利用できる全ての金融商品でNISA制度を利用できるわけではありません。
リートの場合は、以下のどの方法でもNISA制度を利用できます。
リート(J-REIT) | 成長投資枠 |
---|---|
リートETF | 成長投資枠 |
投資信託(リートファンド) | つみたて投資枠 成長投資枠 |
ただし、投資信託では全てのリートファンドがNISA適用という訳ではありません。
つみたて投資枠・成長投資枠の2種類とも利用可能、1種類のみ利用可能、2種類とも利用不可など、ファンドによってNISAの適用可否は異なりますので、投資前に確認が必要です。
6. 投資家への優待制度がある
一部のリートでは、投資家向けの優待制度を提供している銘柄もあります。
投資法人が保有している商業施設やホテル、リゾートなどの施設で使える割引券や宿泊券などが優待の内容です。
すべてのリート(J-REIT)が優待を提供しているわけではないので、リートに投資するなら投資前に制度の有無や内容を確認すると良いでしょう。
(証券コード) 投資法人名 | 優待内容 | 権利確定月 |
---|---|---|
(8963) インヴィンシブル投資法人 | ホテル宿泊割引 | 6月 / 12月 |
(8975) いちごオフィスリート投資法人 | 抽選でJリーグ観戦チケット | 4月 / 10月 |
(3476) 投資法人みらい | ホテル宿泊割引 | 4月 / 10月 |
(8986) 大和証券リビング投資法人 | 介護施設の利用割引など | 3月 / 9月 |
リート投資がおすすめな人とおすすめしない人
ここまでの内容をもとに、リート投資に向いている人とそうでない人をまとめてみましょう。
- 不動産投資したいけど資金が足りない人
- 手間を掛けずに気軽に不動産投資したい人
- 定期収入(インカムゲイン)がほしい人
- 株や債券以外の分散投資先として利用したい人
リートは、不動産の魅力を活かしながら、少額で手間なく投資できる点が魅力です。
またリートの分配金は4%と高いため、株式の配当以上に安定した収入が期待できます。
不動産市場は、株式市場や債券市場と異なる動きをすることがあるため、リートに投資することでポートフォリオの安定化も期待できます。
- リスク許容度が低い人(元本保証を求める人)
- 不動産投資に興味があり資金や時間が十分ある人
- 短期間で高いリターンを狙いたい方
- 高利回りを狙いたいけど不動産投資に拘らない人
- 資産を元手に利息生活を送る人
リートには価格変動(国内株式と大差なし)があり、 元本保証を求める人には不向きです。
またリートは不動産への投資ですが、実物不動産投資のような節税効果やレバレッジ効果がありません。
十分な資金の余裕がある方は、実物不動産投資の方がメリットが大きい場合もあるでしょう。
また、利息生活を送る人はREITに投資をすると元本割れのリスクが高いためおすすめできません。利息生活は元本を守りながら配当による運用益を出すのが鉄則です。
利息生活については下記の記事でまとめています。
高いリターンを得ることが目的であり、不動産投資に拘らないという方は、リート以外の選択肢も検討するのがおすすめです。
続く章では、リートと同等、もしくはそれ以上のリターンが期待できるおすすめの運用先を5つ紹介しますので、より多くの選択肢からご自身に合う投資先を探してみましょう。
リート以外にも検討したい初心者向け運用先5選
お金を増やす目的で利用される金融商品は様々ですが、ここでは一般の個人投資家が利用しやすい投資先を挙げてみます。
青文字で示した投資先は、利回りが非常に低い投資先ですが、参考までに提示しています。
資産運用である程度まとまった利益を期待するのであれば、赤文字で示した投資先を活用していく必要があります。
ヘッジファンドは、投資家から集めた資金を一括でファンドマネージャーが分散投資し、その成果を投資家に分配します。
ヘッジファンドの最大の特徴は「絶対収益」を目標に投資を行う点。高度な投資手法を用いてどのような相場環境でも利益獲得を目指します。
投資の知識が少ない初心者の方でも、投資のプロの手腕で、年利10%以上の高いリターンを目指せるのが魅力です。
投資信託も、投資家から集めた資金をファンドマネージャーが分散投資し、成果を投資家に分配する金融商品です。
既出のヘッジファンドよりも運用手法に関する規制が多いため、上昇相場では利益が出しやすいものの、反対に下落相場では損失を出しやすくなってしまいます。
ただし最低投資金額が500万円以上と高額なヘッジファンドに対し、100円程度の非常に少ない資金で始められるのが投資信託の一番のメリットでしょう。
株式投資は、自分で企業の株式を購入し、その企業の成長に伴う株価の値上がり益や配当金を得る仕組みです。
配当金のある銘柄を選べば、リートと同様に、定期的なインカムゲインを得ることも可能です。
ただし、市場の動向や企業業績により価格が変動するため、高いリターンと引き換えにリスクも高めです。
市場動向を分析したり、投資する銘柄を分散したり、売買タイミングや取引タイミングも図らなくてはならないため、株式投資には一定の知識と時間が必要です。
ソーシャルレンディングは、企業にインターネットを通じてお金を貸し出し、その利息を受け取る仕組みです。
銀行を介さず直接融資を行うため、高い利回りが期待できるほか、利率が固定であるため、投資利益がいくらになるのかを予め知ることが出来るのが魅力です。
ただし、貸し倒れリスクが伴うため、投資家は借り手の信用リスクをよく確認する必要があります。
不動産クラウドファンディングは、インターネットを通じて多数の投資家から資金を集めて、不動産投資する仕組みです。
1万円程の少額から投資でき、運用中の価格変動がないため、事前に利益額を想定することができます。
また、運用で損失が発生した場合は、運営会社の出資金から優先的に損失を補填するという「優先劣後」の仕組みにより、投資家は損失リスクを抑えることも出来ます。
ただし投資案件の満期は、数か月~数年と長く、満期までは基本的に解約できない点に注意が必要です。
このように、リート以外にも4%以上の高い利回りを狙うことのできる商品は多くあります。
リターンの高さ、リスク度合い、投資の手軽さ、資金の流動性、定期収入の有無など、投資においてご自身が何を優先したいのかによって、適切な運用方法を選択いただくと良いでしょう。
またリスク分散のために、複数の投資先に資産を分けてポートフォリオを構成するのもおすすめです。
次の記事では、お金を増やす方法をランキング形式で解説していますので参考にしてください。
リート(REIT)に関するQ&A
最後に、リートに関するよくある質問をまとめました。リートへの投資を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
リートへの投資方法は?
リートは、証券会社の窓口やインターネットによる取引で売買することができます(投資信託は銀行でも購入可能)。
1. 証券会社を選び口座を開設する
2. 資金を入金する
3. 購入するリート(もしくはETFや投資信託)を選ぶ
4. 購入注文を出す
4. 保有し分配金を受け取る
5. 売却したい場合、売り注文を出す
リートを選ぶ際の注意点は?
リート銘柄を選ぶ際には、リスク対策として、以下に挙げる点に注意しましょう。
Jリート | リート ETF | 投資信託 | |
---|---|---|---|
不動産の種類や地域が分散するように銘柄を選ぶ | 〇 | 〇 | 〇 |
価格騰落率が大きい銘柄を避ける | 〇 | 〇 | 〇 |
純資産総額の小さい銘柄に注意する | 〇 | 〇 | 〇 |
LTV(有利子負債比率)の高い銘柄を避ける | 〇 | – | – |
NAV倍率が1以上の割高な銘柄に注意する | 〇 | – | – |
格付けが低い銘柄を避ける | 〇 | – | – |
信託報酬の高い銘柄を避ける | – | 〇 | 〇 |
不動産の種類ごとの特性を知っておく(※1) | 〇 | 〇 | 〇 |
リートの価格変動要因を知っておく(※2) | 〇 | 〇 | 〇 |
分配金の出るタイミングを意識して運用する | 〇 | 〇 | 〇 |
為替変動に注意する (海外REIT) | – | – | 〇 |
※1 リートの主な物件の種類と特徴
種類 | 主な投資物件や特徴など |
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住宅 | 賃貸マンションに投資する。収益が景気に左右されにくいとされる |
物流施設 | 運送会社やインターネット通販会社の倉庫など。新型コロナウイルスの影響で需要増も |
オフィスビル | 入居者が企業のため、景気の影響を受けやすい |
商業施設 | ショッピングモールや大規模スーパーなど。テナントが退去すると収益が減る |
ホテル | ホテルの経営状況が収益に影響し、宿泊客の減少が続くなどすると収益が悪化しやすい |
ヘルスケア施設 | 有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など介護施設。将来は需要が拡大するとの見方も |
複合型・総合型 | オフィスビルと商業施設といった2種類以上の物件に投資する |
※2 リート価格の変動要因
- 不動産市場の変動:保有不動産の価値変動がREIT価格に影響
- 金利の変動:金利が上昇すると借入コストが増加し、REIT価格が下落しやすい
- 景気動向:経済不況は不動産需要の低下や賃貸収入の減少を引き起こす
- 不動産の賃貸収入:賃料が減少すると、REIT価格の下落に繋がる
- 物件の空室率:空室が多いと収益が減少し、REIT価格の下落に繋がる
- 運用会社の業績:REITを運用する会社の実績や戦略が価格に反映される
- 供給過多:新たな不動産の供給が増えると、価格が下落する可能性がある
- インフレ:インフレ時には不動産価値が上がりやすい
- 政策・規制の変更:税制や不動産関連の政策変更が影響を与える
- 自然災害:地震や台風などの災害リスクが、不動産価値に影響を及ぼす
人気のJ-REIT銘柄や投資信託は?
各投資方法別の人気銘柄の一例は以下の通りです。ネット上で各法人名を検索すれば、運用の詳細情報をご覧いただけます。
Jリート | 3462 野村不動産マスターファンド投資法人 8951 日本ビルファンド投資法人 8952 ジャパンリアルエステイト投資法人 3283 日本プロロジスリート投資法人 8963 インヴィンシブル投資法人 |
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リート ETF | 1488 iFreeETF 東証REIT指数 1476 iシェアーズ・コア Jリート ETF 1597 MAXIS Jリート上場投信 1343 NEXT FUNDS東証REIT指数連動型上場投信 |
投資信託 | 【国内リート】 J-REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型) ダイワJ-REITオープン(毎月分配型) eMAXIS Slim国内リートインデックス 【海外リート】 フィデリティ・USリート・ファンドB(Hなし) ダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型) Bコース(Hなし) eMAXIS Slim先進国リートインデックス |
J-REIT市場の今後の見通しは?
以下の図は、東京証券取引所に上場しているJ-REIT全銘柄を対象とした指数である「東証リート指数」推移です。
J-REITについては、今後「底堅く推移する」との予想が優勢です。
- プラス要因1. 米国では 9 月の米連邦公開市場委員会で 0.5%の大幅利下げを決定し国内長期金利も低下
- プラス要因2. 日銀が利上げに対し慎重な姿勢を強調
- プラス要因2. オフィスセクターで需要回復による賃料の値上げが期待される
- プラス要因3. 1ドル140円台へと円高が進み、為替の心配が不要なJ-REITへの資金流入が期待される
- プラス要因4. インフレ環境下、全用途で収益拡大施策の積極化や、割安な自己投資口を取得する動きが加速
- プラス要因5. 上場リートや私募リートの買収案件も増えてきており、市場の活性化が期待される
- プラス要因6. 国内の収益不動産約240兆円の内、証券化済みの不動産は47兆円程=将来性がある
- マイナス要因. 米国の景気不安が再燃するとリスク回避的な市場環境となり下落する可能性あり
【情報元】
明治安田アセットマネジメント|投資環境見通し(2024年9月)
しんきんアセットマネジメント投信株式会社|Jリート市場の現状と見通し : 2024 年 9 月(月中版)
ニッセイアセットマネジメント株式会社|J-REIT市場 現状と今後の見通し(2024年9月号)
三菱UFJ信託銀行|J-REIT 投資の魅力
「リートがおすすめしないと言われる理由」まとめ
リートは、手間を掛けずに、少額から、オンライン上で不動産に分散投資できるなどメリットも多い投資先です。
さらに、分配金利回りは4%程と高く、安定したインカムゲインを望む人(老後生活を送る人など)には、魅力的な収益源となるでしょう。
また、不動産市場は株式や債券とは異なる値動きを示すため、これらの投資先とリートを組み合わせることでポートフォリオのリスク軽減や利益の安定を図ることもできます。
しかし、どんな金融商品も万能という訳ではありません。
リートは以下のような様々なデメリットから、「おすすめしない」と言われています。
リートだけに投資先を絞ってしまうのではなく、投資先の一つとして他の運用先と組み合わせて利用することで、ポートフォリオの安全性を高めつつ収益の最大化を図っていくことができるでしょう。
※投資の最適な判断は、個人のリスク許容度や投資目標などによって異なります。リートを始め多くの金融商品には元本割れリスクが伴いますので、十分な情報収集と検討のもと、最終的な判断はご自身で慎重に行ってください。
リート以外のおすすめ投資先として株式関連の投資信託も挙げられます。
さわかみ投信もその1つ。下記で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
当サイトでは、そのほかの投資信託についても解説しています。