低金利の日本債券に比べて、利回りの良い外国債券に興味を持つ投資家は多いのではないでしょうか。
外国債券には多くのメリットがありますが、同時に特有のリスクもあります。例えば、信用性や為替変動などによるリスクですね。投資する際は、そうした点を十分に把握しておく必要があります。
この記事では、外国債券が持つリスクを中心に、特徴やメリットを初心者でも分かりやすく解説します。外債を選ぶ際のポイントなどにも触れていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
外国債券の特徴・概要
まず最初は基礎知識として、外国債券の役割や種類、発行形態などを解説していきます。
- 債券の役割と仕組み
- 外国債券の種類とは
- 外国債券の発行形態とは
債券の役割と仕組み
外国債券に限らず債券とは、発行体(国や企業、地方公共団体など)が資金を調達するために発行する有価証券であり、借用証明書としての働きもあります。
債券には償還日と呼ばれる期限が決められており、発行体は必ずその日までに借入金を返さなければいけません。さらに、その借入金に対して利子も発生します。
債券への投資は、投資家が発行体へ資金を借すことで利子による利益を得て、償還日には資金が返ってくることで成立します。
日本国債の場合は、銀行に預けるよりも利子や安全性が高いといわれることもありますが、外国債券の場合は、高金利に加えて為替変動などの要因も加わることが大きな特徴でしょう。
外国債券の種類とは
外国債券には、払込み・利払い・償還時の支払いなどの取引で、どの通貨が使われるかによって主に3つの種類があります。
ここからは、それぞれの違いや特徴を解説していきましょう。
外貨建債券
取引(払込み・利払い・償還時の支払いなど)を全て外貨で行うのが外貨建債券です。外貨建債券には、主に「各国国内債券」と「ショウグン債」の2種類がありますが、どちらも外貨建てなので、為替変動の影響を受けます。
各国国内債券 | 海外の発行体が、各国通貨建てでそれぞれの国で発行する債券 |
ショウグン債 | 海外の発行体が、各国通貨建てで日本市場で発行する債券 |
「ショウグン債」はやや冗談っぽい名称ですが、海外でも「shogun bond」として通じます。他には、オーストラリア債をカンガルー債、中国債をパンダ債などと表すことがあり、国の特徴を捉えた名称をつけることは国際的な習慣になっています。
円貨建債券
取引の全てを日本円で行うのが、円貨建債券です。基本的に海外の発行体が日本円建てで日本市場で発行する債券なので、為替変動の影響を受けません。円貨建債券には主に「サムライ債」と「ユーロ円債」の2種類があります。
サムライ債 | 海外の発行体が、日本円建てで日本の市場で発行する債券 |
ユーロ円債 | 日本や海外の発行体が、日本円建てで日本以外の市場で発行する債券 (ここでいう「ユーロ」は通貨のことではなく、日本以外の市場全般を意味している) |
二重通貨建債券
取引を2種類の通貨で行うのが、二重通貨建債券です。外貨と日本円の両建てになっており、為替変動の影響を受けにくい特徴があります。二重通貨建債券には「デュアルカレンシー債」と「リバースデュアルカレンシー債」の2種類があります。
デュアルカレンシー債 (順デュアル債) | 払込みと利払いは日本円で、償還時の支払いは外貨で行われる外国債券 |
リバースデュアルカレンシー債 (逆デュアル債) | 払込みと償還時の支払いは日本円で、利払いは外貨で行われる外国債券 |
外国債券の発行形態とは
外国債券には利息の扱いによって、「利付債」「ゼロクーポン債」「ストリップス債」という3つの発行形態があります。
利付債 | 償還日に至るまで、定期的に利息が支払われる債券。 「年2回」や「毎月」など、各外国債券によって決められたタイミングで利息が支払われる |
ゼロクーポン債 | クーポン(債券で発生する利息)がない債券。 利払いがない代わりに利息に当たる金額が額面より割り引かれて発行されるが、償還は額面金額で行われる |
ストリップス債 | 利付債の元本とクーポンが分けられ、それぞれがゼロクーポン債として発行される債券。 米国財務省によって開発され、日本語では元本利子分離債と呼ぶ |
外国債券のリスク
ここからは、外国債券投資を行う際には必ず知っておきたいリスクについて、以下の5項目を解説していきます。
- 為替変動リスク
- 価格変動リスク
- カントリーリスク
- 信用リスク
- 流動性リスク
為替変動リスク
外貨建ての外国債券の場合、まず考慮すべきは為替変動リスクです。急激な円安や円高が発生した場合、利払いや償還金、または売却時の収益に影響が出る可能性があります。
価格変動リスク
外国債券をはじめ債券は、償還日に元本が戻ってきますが、途中で売却することも可能です。しかし債券は価格が変動するものであり、売却するタイミングによっては利益が出ることもありますが、損失が発生し元本割れとなるリスクもあります。
カントリーリスク
カントリーリスクとは、発行体となる国家が原因となるリスクです。その国の政治的・経済的情勢不安が元となり、元本割れを起こしたり、償還日前に売却ができなくなるなどのリスクがあります。
信用リスク
信用リスクとは、経済的な問題などによって、発行体が利払いや償還金の支払いができなくなるリスクです。外国債券の場合は、スタンダード・アンド・プアーズやムーディーズなど海外の民間格付け会社が発表している国債の格付けランキングなどを参考にすることで、事前にある程度リスクを把握できます。
流動性リスク
償還日前に売却も可能な債券ですが、買いたいと思う人がいなければ売りたくても売れません。これを流動性リスクと呼びます。外国債券も市場の影響を受けることは、把握しておく必要があります。
外国債券のメリット
外国債券には、日本と比べた場合の金利の高さ、そして投資する上では日本株とは異なる値動きを生かしてポートフォリオを組めるといった魅力があります。
ここからは外国債券のメリットとして、3つの項目を解説していきます。
- 高利回りが期待できる
- 円安なら為替差益が発生する
- 分散投資でリスクヘッジに使える
高利回りが期待できる
利回りの高さは外国債券最大のメリットでしょう。ここで日本を含む7
カ国で、10年国債の利回りを比較してみたいと思います。
国名 | 10年国債の利回り |
日本 | 0.625% |
アメリカ | 4.251% |
ドイツ | 2.617% |
オーストラリア | 4.233% |
中国 | 2.562% |
ブラジル | 10.886% |
南アフリカ | 10.47% |
(2023年8月21日 三井住友信託銀行マーケット情報より)
上に挙げた中では、ドイツとオーストラリアは国債の格付けランキングで1位の国々ですが、そうした国債でも日本よりもはるかに高い利回りとなっています。
また、さらに高い利回りとしてブラジルや南アフリカの国債もありますが、こうした国債に投資する場合は、カントリーリスクや信用リスクに注意が必要です。
円安なら為替差益が発生する
外国債券には為替変動リスクがありますが、裏を返せば為替差益が発生する可能性もあることを意味しています。
償還日まで債券を保有し、定期的に利息を得ることが債券投資の基本的なスタイルですが、外債の場合は購入時よりも円安になったタイミングで売却することで、日本円に換算した時に利益を得ることができます。
分散投資でリスクヘッジに使える
投資においては、リスクヘッジとして資金を集中させず分散させることが望ましいといわれますが、そのために外国債券への投資が有効な場合があります。
例えば、国内債券や国内の株式のみに投資をした場合、世界や日本の景気動向によっては、保有する全ての金融商品で価格が下がってしまうリスクがありますが、値動きの異なる外国債券もポートフォリオに組み込むことで、リスクに対する保険をかけることも可能です。
リスクを考慮した外国債券の選び方
ここからは、外国債券の選ぶ際のポイントとして、以下の2点を解説していきます。
- 発行体の格付けと金利のバランス
- 運用期間
発行体の格付けと金利のバランス
外国債券を購入する際は、発行体の格付けや信用リスク、そして金利のバランスを考慮して投資する国債を選ぶ必要があります。
発行体の信用性は、「ソブリン格付け」を確認するのが一般的な方法です。ソブリン格付けとは、国債の信用力を表す指標で、アメリカのS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)やムーディーズ、日本では、格付投資情報センターや日本格付研究所などが格付会社として有名ですね。
ここで、先述した各国の10年国債の利回りに、S&Pによる各国債の格付けを加えた一覧表を見てみましょう。
国名 | 10年国債の利回り | S&Pによる格付け |
日本 | 0.625% | A+ |
アメリカ | 4.251% | AA+ |
ドイツ | 2.617% | AAA |
オーストラリア | 4.233% | AAA |
中国 | 2.562% | A+ |
ブラジル | 10.886% | BB- |
南アフリカ | 10.47% | BB- |
上記表にある格付けの分類は、実際はもっと細かいのですが、大まかには以下のような見方になります。
- AAA:信用リスクが最小
- AA:信用リスクが極めて低い
- A:信用リスクが低い
- BBB:信用リスクが中程度
- BB:信用リスクあり
- B:信用リスクが高い
- CCC:信用リスクが極めて高い
- D:債務不履行
こうした格付けのうち、BBBランク以上が投資に適しているとされ、BBランク以下は投資に不適とされます。
ブラジルや南アフリカは10%を超える高い利回りですが、同時に格付けの低さを考慮する必要があり、投機的な商品と考えられます。
格付けが最高ランクのドイツやオーストラリアなどでも、日本に比べて十分に高い利回りとなっており、外国債券の投資がはじめての方でも、比較的選びやすい商品といえますね。
運用期間
債券の特徴として、一般に償還までの期限が長い方が利回りは良くなるため、運用計画との兼ね合いが必要にアンリます。
例えば日本国債の場合、3年債は0.085%なのに対し、10年債は0.669%(2023年8月時点)となっています。しかし、国債によっては年限が短い方が利回りが良い時もあるので注意が必要です。
途中で売却せず償還日まで保有する投資計画の場合は、ご自身のライフステージなどを考慮しつつ、運用期間に合わせた債券を選択する必要があります。
よくある質問
最後に、外国債券に関するよくある質問に回答していきます。
- 外国債券と国内債券の違いは?
- 外国債券と外貨預金のどちらが良い?
- 投資信託で外債投資はできる?
- 外国債券に税金はかかる?
外国債券と国内債券の違いは?
外国債券とは、発行体、通貨、発行される市場のいずれかが外国である債券のことです。外国がその国の通貨で発行する債券も外国債券ですが、日本が外国の市場で発行する日本国債も外国債券に含まれます。
一方で国内債券とは、日本の発行体が、日本円で、日本の市場において発行する債券を指します。
外国債券と外貨預金のどちらが良い?
外国債券と外貨預金は似た部分はありますが、それぞれに特徴や一長一短があり、一概にどちらが良いとはいえません。
外国債券における発行体・償還日・利回りは、外貨預金における銀行・満期日・預金利率に相当するでしょう。そしてどちらにも、為替変動リスクや信用リスクは存在します。
こうした類似点はありますが、外国債券には価格変動リスクがあり、償還日前に換金する場合、債券の価格によっては損失が出る場合があります。
一方で外貨預金では、定期預金の場合は途中解約ができない商品もあるため、外債とは別の意味で換金性が良いとは限りません。
それぞれの特徴を考慮し、自分自身の運用計画にあった商品を選ぶようにしましょう。
投資信託で外債投資はできる?
投資信託で外債投資はできます。
通常、外国債券を購入する場合は、一つの商品に付き一つの国債を買う形になりますが、外国債券へ投資するファンドを利用した場合、一つの商品でも複数の国債に分散投資を行えます。
この他、小額からでも投資しやすいことや、換金性の高さも外債ファンドの特徴ですが、ファンドを利用した場合は信託報酬が費用としてかかるなどの注意点もあります。
外国債券に税金はかかる?
外国債券に税金はかかります。
発生する税金は以下のようになります。
利付債の場合 | ゼロクーポン債の場合 |
利子に対して、申告分離課税(利子所得) →税率20.315% 償還差益/売却益に対して、申告分離課税(譲渡所得) →税率20.315% | 償還差益/売却益に対して、申告分離課税(譲渡所得) →税率20.315% |
税率は、所得税、住民税、復興特別所得税が含まれます。
まとめ|リスクを把握して高い利回りを活かそう
今回は、外国債券への投資を考えている方のために、そのリスクやメリットをわかりやすく解説してきました。
高い利回りが魅力の外国債券ですが、特に為替変動リスクは国内債券にはないものであり、注意が必要です。その他、発行体の信用リスクやカントリーリスクなども、十分に把握しておきたいですね。
ファンドを通して外国債券へ投資する方法もあるので、ご自身に合った方法を探してみてください。