外国債券のシミュレーション方法とは?利回りや損益分岐点を含め解説

外国債券への投資をする際、どうしても気になるのが為替変動による損失ではないでしょうか。

しかし、事前にシミュレーションを行い損益分岐点を把握しておけば、思ったよりも為替変動に耐えられることがわかって、購入に踏み切りやすくなる場合もあります。

この記事では、利回りを含めた外国債券投資を行う際の基礎知識、そして実際のシミュレーション方法を、初心者の方にもわかりやすく解説します。

目次

外国債券のシミュレーションをする前の基礎知識

外国債券のシミュレーションをする前の基礎知識

初めて外国債券のシミュレーションを行う前には、あらかじめ知っておきたい用語や考え方があります。

まずは、5つの基礎知識を確認していきましょう。

  1. 外国債券の利回りとは
  2. 利回りと利率の違い
  3. 為替変動リスクと損益分岐点とは
  4. 債券には「新発債」と「既発債」がある
  5. 利息の支払いによって外国債券の種類は異なる

外国債券の利回りとは

外国債券のメリットとして利回りの高さがあり、シミュレーションする際にも欠かせないポイントです。

参考として、各国の10年国債の利回りを見てみましょう。

国名10年国債の利回り
日本0.650%
アメリカ4.111%
ドイツ2.543%
オーストラリア4.076%
ブラジル10.650%
南アフリカ10.205%

三井住友信託銀行マーケット情報より)

低金利の日本に比べ、外国債券の利回りの高さが目立ちますね。

上に挙げたアメリカ、ドイツ、オーストラリアは日本よりも格付けの高い国債なので信用リスクは低いのですが、より利回りの良いブラジルや南アフリカは信用リスクの高さに注意が必要です。

また利金が支払われるタイミングは国債によって異なり、日本や米国の国債は年2回、ドイツ国債は年1回などとなっていますね。

外国債券のシミュレーションでは、利子も含めて計算されることになります。

利回りと利率の違い

外国債券のシミュレーションをする際には「利率」や「利回り」などの用語が出てきますが、これらの言葉はそれぞれ意味が異なります。

利回りとは、利息も含めた購入金額に対する年間の収益割合を指します。

それに対して利率とは、債券の額面に対して受け取れる利息の割合のことですね。

外国債券での投資判断の際は、利率よりも利回りを重視すべきといわれています。

為替変動リスクと損益分岐点とは

外国債券のシミュレーションでは、為替変動リスクと損益分岐点の2つの要素を把握しておく必要があります。

為替変動リスクとは、利払いや償還など取引に外貨が使われる外国債券の場合に、債券を購入した時と、売却または償還時の為替レートの違いによって損失が発生するリスクのことですね。

その際に考慮すべきなのが、損益分岐点です。

もし外国債券に金利が存在しなければ、購入時よりも円高になればその時点で為替差損が生じてしまいますね。しかし、多くの外国債券の利率は高いため、購入時よりある程度円高になっても、金利による運用益でマイナス分を補うことが可能です。為替変動による損益と金利による運用益を含めて、利益と損失が分岐する為替レートのことを「損益分岐点」と呼びます。

外国債券のシミュレーションを行う目的として、「これくらいまでレートが下がっても(=円高になっても)大丈夫」という水準を事前に確認することがあります。損益分岐点となるレートがわかれば、投資判断も行いやすくなります。

外国債券には「新発債」と「既発債」がある

実際に外国債券を購入しようと証券会社を見てみると、同じ外国債券でも利率や償還日の異なる国債が多く取引されていることがわかります。

既に発行され市場で取引されている債券のことを「既発債」と呼びます。一方で、新しく発行される債券のことは「新発債」と呼びます。

ここで、それぞれの違いを簡単にまとめてみましょう。

 新発債

発行市場で新しく発行される債券 証券会社などで発行時期や金額などの条件が示され、一定の申し込み期間内に購入が可能 販売額に制限があるため売り切れる可能性があるが、償還まで保有した際の利払いなどは分かりやすく、計画的な運用がしやすい

既発債

すでに発行され、流通市場で取引されている債券 利回りや年限の種類が豊富で、自分に合った債券を好きなタイミングで購入できる 市場の動向に応じて価格は変動する 経過利息の支払いが必要な場合がある

利付債の購入では、受渡日がその債券の利払日と異なることがあります。そうした場合、経過日数に応じて買い手は売り手に対し経過利子を支払うことで、公平性が保たれるようになっています。

外国債券のシミュレーションを行う際は、新発債と既発債の違いも念頭におく必要がありますね。

利息の支払いによって外国債券の種類は異なる

外国債券などの債券には、利息の扱いによって以下3つのタイプに分けられており、シミュレーションを行う際にも考慮しておくと良いでしょう。

  • 利付債
  • ゼロクーポン債
  • ストリップス債

利付債は、定期的に利払いがされる債券のことですね。

ゼロクーポン債は、クーポン(債券の利率)がない代わりに債券の額面よりも低い金額で購入でき、償還時に額面通りの金額を受け取れる債券です。

ストリップス債は、利付債の元本とクーポンが分けられており、それぞれがゼロクーポン債として販売されている債券で、米国国債に多いタイプとなっています。

外国債券のシミュレーション方法

外国債券のシミュレーション方法

ここからは、実際の外国債券のシミュレーションのやり方を見ていきます。

以下の項目を順に確認していきましょう。

  • 証券会社のシミュレーションツールを使うと便利
  • 債券を選び債券詳細を入力する
  • 計算結果を確認する

証券会社のシミュレーションツールを使うと便利

外国債券投資のシミュレーションは、手作業で計算することも不可能ではありませんが、非常に手間がかかります。そのため、シミュレーションを行う際は、ご利用の証券会社に設置されているシミュレーターを使うのがおすすめですね。

証券会社のサービスで概算のシミュレーションを行う場合、主に2つの方法があります。

  1. 一つ一つ条件を入力してシミュレーションする方法
  2. その証券会社で実際に販売されている新発債や既発債を選択し、購入額などを指定してシミュレーションする方法

1番目は、一般的な債券投資のシミュレーションを行う際に有効で、やや経験者向きの方法です。

2番目は、興味のある債券を選んだ状態でシミュレーションできるので、初心者でも使いやすい方法です。本記事ではこの方法を中心にお伝えします。

債券を選び、債券詳細を入力する

今回は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシミュレーターを例にシミュレーションの方法を見ていきますが、どの証券会社も同じような使い方なので参考にしてみてください。

まず最初は証券会社の外国債券のページを開きます。多くの場合、新発債より既発債の方が品揃え豊富で、タイミングによっては取り扱い可能な新発債がないこともあります。今回は既発債から選択してみます。

債券を選び、債券詳細を入力するの図解画像

次は通貨の選択です。

通貨の選択の図解画像

通貨を選択すると、該当する債券が検索されますので、そこから興味のある外国債券を選んでみましょう。

銘柄選択の図解画像

外国債券を選ぶと、以下のように、銘柄や利回りなどの債券詳細が入力されたシミュレーションページへ移ります。

外国債券のシミュレーションページの図解画像

ユーザーが入力する項目は、以下の2つです。

項目内容
購入額面債券の購入単位で、償還時に受け取れる金額になる
為替基本的には購入時点(シミュレーション時点)のレートを入力する

入力を終えたら「計算する」をクリックし、シミュレーション結果を確認しましょう。

計算結果を確認する

シミュレーション結果は、以下のようにページ下部に表示されます。

シミュレーション結果の画像

シミュレーションでは、経過利子や受渡代金、損益分岐点などを確認できます。

損益分岐点では、利益と損失が分かれる水準を為替レートごとにシミュレーションしてくれるのでわかりやすいですね。こうした情報を事前に知ることで、投資判断に活かすことができます。

シミュレーションをする際の注意点

外国債券の投資を行う際は、事前にシミュレーションしておくことは重要です。しかし、シミュレーションの内容は絶対に正しいわけではありません。

外国債券のシミュレーションをする際の注意事項として、以下2点を確認していきましょう。

  1. シミュレーションの結果はあくまで概算
  2. 既発債の価格や条件は変動する

シミュレーションの結果はあくまで概算

外国債券シミュレーションの結果はあくまで概算であり、実際の取引がシミュレーション通りになることは保証されていません。

例えば、経過利子や受渡代金などは一般的な条件を仮定した場合の概算であり、利金や差益に対する為替スプレッドなどは考慮されていません。

また、実際の取引では、受渡日は日本や海外の祝日や休業日などの影響を受けますが、そうした点も考慮されていないので注意しましょう。

既発外国債券の価格や条件は変動する

既発外国債券の販売価格や利回り、そして適用される為替レートなどは日々変動します。また、利回りは外貨によるものであり、日本円に換算されたものではない点にも注意が必要です。

取引には、最大1円の為替スプレッドが含まれる為替レートが適用されます。したがって、為替変動がない場合でも、為替差損や元本割れが生じる場合があります。

外国債券のシミュレーションQ&A

外国債券のシミュレーションQ&A

最後は、外国債券のシミュレーションについて、以下のよくある質問に回答していきましょう。

  • 外国債券のシミュレーションはどこでできますか?
  • 購入額面が増えると、損益分岐点は下がりますか?
  • 新発債と既発債、どちらがおすすめですか?
  • シミュレーションと実際の取引で結果が違うのはなぜですか?

 外国債券のシミュレーションはどこでできますか?

外国債券の損益分岐点などのシミュレーションは、証券会社が公式サイト内に用意しているシミュレーターを利用すると良いでしょう。

例えば以下のような証券会社で、外債シミュレーションが可能です。

  • 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
  • SMBC日興証券
  • 岩井コスモ証券
  • 大和証券
  • SBI証券

証券会社によるシミュレーションでは、基本的に自社で販売中の債券を選択した上でのシミュレーションになりますが、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシミュレーターでは、個別の債券にかかわらず詳細な条件を設定してシミュレーションをすることもできます。

購入額面が増えると、損益分岐点は下がりますか?

償還まで保有すれば基本的に元本が保証されている外国債券のような商品にとって、身近にあるのが為替変動リスクでしょう。

その際に考慮すべきなのが、損益分岐点と呼ばれる損失と利益を分ける円高水準であり、損益分岐点は低い方が安全度は高いと考えられます。

例えば、為替レートや利回りが同じ外債についていえば、購入額面が多くても少なくても、損益分岐点は変わりません。

損益分岐点を下げる方法としては、主に以下の3つが考えられます。

  1. より利回りの良い外国債券を選ぶ
  2. 保有期間の長い外国債券を選ぶ
  3. より円高の時に外国債券を買う

こうした点に注意することで、為替変動リスクに対処できる場合があります。

新発債と既発債、どちらがおすすめですか?

外国債券を選ぶ際は、大きく分けて新発債と既発債のどちらかから選ぶことになります。

それぞれの特徴は、以下の通りです。

新発債

新規で発行される債券のこと 利率や販売価格が決まっているため、計画的な投資しやすい 募集期間内に購入可能のため、いつでも買えるわけではない

既発債

既に発行されて取引されている債券のこと 価格等の取引条件は市場の影響を受けて変動する 証券会社等で取り扱いがあるものはいつでも買えるほか、新発債に比べて種類が豊富

それぞれで特徴が異なるので、どちらかが良いとはいえません。

ただ、新発債の場合は常に売られている訳ではないので、自分が投資したいタイミングで商品がない場合があります。そうした場合は希望の条件に近い既発債から選んでみてはいかがでしょうか。

シミュレーションと実際の取引で結果が違うのはなぜですか?

証券会社が提供している外国債券のシミュレーションツールはとても便利ですが、正確な取引条件や為替スプレッドが考慮されている訳ではありません。そのため、シミュレーションと実際の取引の結果は異なる場合があります。

シミュレーションはあくまで概算ですので、投資計画を立てる際の参考として活用すると良いでしょう。

まとめ

今回は外国債券のシミュレーションについて、基礎的な知識や実際のシミュレーション方法をお伝えしてきました。

利回りが良くても、為替変動による損益リスクのために外国債券への投資をためらう人は多いかもしれませんが、あらかじめシミュレーションをして損益分岐点を把握することで、取引しやすくなるのではないでしょうか。

この機会に、資産形成の手段として外国債券への投資も考えてみてくださいね。

目次