「雑談は時間の無駄」そう思っていませんか?実は、職場での何気ない会話が、ビジネスの成功を左右するかもしれません。なぜ一見無駄に思える会話が、実は生産性向上や人間関係構築に不可欠なのか。そして、どうすれば雑談を活用し、キャリアを加速させることができるのか。
この記事では、職場におけるコミュニケーションの目的や、雑談が持つ驚くべき力について上智大学の清水崇文教授に伺いました。

清水 崇文 / takafumi shimizu
上智大学言語教育研究センター/大学院言語科学研究科教授
【プロフィール】
早稲田大学法学部卒。日本生命保険相互会社での5年間の勤務経験を経て渡米。イリノイ大学アジア学修士(M.A.)、ハーバード大学教育学修士(Ed. M.)、ロンドン大学応用言語学博士(Ph.D.)。スタンフォード大学専任講師などを経て、現職。専門は言語習得論、語用論、談話分析。『雑談の正体:ぜんぜん“雑”じゃない、大切なコミュニケーションの話』など著書多数。
職場におけるコミュニケーションの2つの目的とは?
クリックアンドペイ(以下KL):はじめに、職場でのコミュニケーションを取る上で大切なことについて教えていただけますか。
清水氏:コミュニケーションの目的は大きく2つあります。1つは情報の伝達です。自分が知っている情報を相手に伝えたり、相手が知っている情報を聞き出したりする情報のやりとりのことです。
もう1つの大切な目的が、対人関係の調整です。自分と相手との社会的な関係を良好に保つ、良好な関係を構築したり維持したりすることです。対人関係の調整には関係を解消することも含まれます。
コミュニケーションをする際には、このような2つの目的を常に意識しておくことが大切ですが、この2つの割合はコミュニケーションの種類によって異なります。
例えば、「報告・連絡・相談」や、上司から部下に対しての業務指示などは、情報の伝達を主な目的とする会話です。しかし、このような場合でも、お互いの人間関係を全く無視したコミュニケーションにはならないと思うので、ある程度人間関係のことも考える必要があります。
雑談の目的とは?良好な対人関係の構築と維持のために
一方で、雑談のような会話は、もちろん情報の伝達も行ってはいますが、良好な対人関係を構築したり維持したりすることが主な目的です。
実際に私たちが雑談をしている時に、良好な対人関係を構築する目的を強く意識していることはあまりないと思いますが、雑談とはそういうコミュニケーションであるということを、まず大前提として考えておいた方がいいと思います。
職場での雑談も同じで、対人関係の調整が大きな目的となるため、うまくやるための大切なポイントは以下の3点です。
- 相手を尊重すること。自分のことばかり話さない、相手の話を遮らないことが大切です。
- 共通点や相手の関心事を見つけること。こうしたことを話題にすることにより、お互いの心理的な距離が縮まります。
- 共感すること。相手に対する関心を持って、うなづいたり、リアクションしたりすることで共感の気持ちが伝わります。
これらの3点は、職場に限らず雑談全般において大事なことです。これらのことを意識しながらコミュニケーションをしていくのが大切だと私は思います。
KL:先ほど人間関係を解消することも含まれるとおっしゃいましたが、将来的に起業家志望の学生が起業して成功するにあたって、良好な関係を築いた方がいい人と、あまり関わらない方がいい人の特徴はそれぞれ何かあるのでしょうか。
清水氏:起業をする際にどのような人との関係が重要になるのかについては私にはわかりませんが、人間関係を築く相手を選ぶことは、コミュニケーション以前の問題でしょう。
ただし、コミュニケーションに関して言えば、良好な人間関係を作り上げる、それを維持する、または解消する、これら全てはコミュニケーションによって行われるということです。最後の「解消する」は、あまりピンとこないかもしれませんが、意図的、非意図的にかかわらず、コミュニケーションによって、関係が悪くなったり、関係そのものが断ち切れたりすることはよくあることです。
「解消する」コミュニケーションのリスクと対策
KL:「解消する」コミュニケーションに関連して質問があります。雑談を振られて付き合うのは嫌だけれど断りきれない、あるいは逆にある人との関係を断ち切りたいという悩みもあるかと思います。仕事で雑談をうまくこなしていくコツのようなものがあれば、教えていただきたいです。
清水氏:おっしゃっているのは、例えば「デスク爆弾」のようなものですね。目上の人や断りにくい人が勤務時間中に自分の机にやって来て雑談を仕掛けてくるというようなことだと思いますが、自分の仕事の邪魔をされているわけですから、嫌だというのはよくわかります。
「よい」雑談であるための条件の一つとして、雑談に参加する人全員が雑談をしたいと思っていることが挙げられます。一方が雑談はしたくないのに付き合わされているという状況では、先ほど言った「相手を尊重する」ということができていないことになりますね。
本来であれば、相手を尊重する雑談をしていない人が意識を変える必要があるのですが、そういうことに気づいていない人もたくさんいると思います。このような場合には、話を盛り上げないようにするという自衛手段をとるしかないと思います。この人と雑談をしてもいい気持ちになれないと相手が思えば、雑談をすることはなくなると思います。
ただし、リスクもあります。人事権を持つ上司のような嫌われては困る人に対して、このような自衛手段を徹底すると将来不利益を被るかもしれません。嫌われた場合に被る不利益と、雑談をしたくないという気持ちの両方を天秤にかけ、両者のバランスをとらないといけないでしょうね。
ただ、「よい」雑談というのは、相手が話したいことを話させてあげるのが基本です。だから、その逆をすれば雑談をしたいという相手の気持ちは弱まります。話したいことが話せないのであれば、他の人に話そうということになるでしょう。聞いてくれる人に話すようになるので、相手が「あなた」と親しくなりたいという目的で雑談を仕掛けてきているのでない限り、聞いてあげなければ他の人のところに行ってくれると思います。
コミュニケーション能力向上のためのヒント
KL:なるほど、今度は逆に、コミュニケーション能力を上げるための方法があれば、教えていただきたいです。
清水氏:雑談的なコミュニケーションに関していえば、まず、何のために雑談をするのかを意識することが大切です。職場で隣席の同僚と雑談をするような場合には特に目的を意識する必要はないかもしれませんが、例えば、クライアントとの商談の前に雑談をする場合や、ビジネス上重要な人を紹介されて、その人と親しくなりたい場合などでは、そもそも何のために会っているのか、目的は何なのかということを意識しないで雑談するのと、意識した上で雑談をするのとでは、雑談の質が変わってくると思います。したがって、雑談をする前の段階で、「なぜ今日このタイミングで会うのか」「なぜ自分はわざわざ時間を割いてこの人と一緒にいるのか」ということを自分の中できちんと確認する作業を最初にするのが良いでしょう。
実際にコミュニケーションに入ったら、先ほど挙げた3つの「相手を尊重する」「共通点や相手の関心事を見つける」「共感する」ということを具体的にやっていくことになります。とにかく会話をする時には、相手に肯定的な関心を持って臨むことです。意識的に好意を持って会話をすることがとても大事なことだと思います。
「自分が人に何かをしたら、相手は同じことをしなければならないという義務感を感じる」という心理学でいう返報性の法則というものがあります。例えば、プレゼントをあげたら相手はプレゼントを返さなければと思うといった心理状態のことです。したがって、相手にこちらが好意を持っているということを示すと、相手もこちらに好意を持たなければという気持ちになります。つまり、好きになれば好きになってもらえるということです。
雑談における自己開示とラポールの醸成
私は雑談の本質とは「相互的自己開示によるラポールの醸成」であると捉えています。相互的自己開示というのは、お互いに自分のことを相手に話すことです。自分の過去の経験であったり将来の予定であったり、何かに対する自分の考え方や意見、感じる気持ちなどを相手に伝えることが自己開示です。
相互的自己開示によって何が起こるかというと、ラポールが生まれます。ラポールは心理学の用語で、もともとフランス語で「架け橋」という意味です。相手と自分の気持ちの間に架け橋がかかるということを意味し、信頼関係であったり相手に対して強い親近感を感じるような心理的な状況をラポールといいます。
自己開示をお互いにし合うことによって、相手との間にラポールを作るのが雑談です。ただし、自己開示といっても、先ほども指摘したように、自分のことばかり話さないことが大切です。むしろ相手に話をさせる。「相互的」とはいっても、自己開示の量は相手の方が多くなるようにする。自分も適度に自己開示をしながら、相手にたくさん話してもらうというのが基本的なやり方になると思います。
相手が何か話している時に「私もそうなんだ」「僕はこう思うけど」などと言って自分の話を始めるのはNGで、相手が語りたい内容を満足するまで相手に語ってもらうことが大切です。ただ、相手に語ってもらうだけではなく、語ってもらったことに対して「そうだね」と共感したり「すごいね」と承認したりする必要もあります。
そもそも、人は自分の体験を誰かに語りたいという欲望を持っていますが、語った上でさらに共感してもらいたい、承認されたいという欲望も持っています。SNSで「いいね」を押してもらいたいというのがまさにこれですね。したがって、雑談では相手が求める共感や承認を満たしてあげる必要があるのです。
相手により多く話してもらい、相手が話している時は相手の話を遮らず、リアクションはちゃんとする。特に同意や共感、承認のリアクションをしっかりとします。さらに相手に話してもらうためには上手に質問をすることも必要です。
雑談で絶対にやってはいけないのは「相手を否定する」ことです。ディスカッションではないので、相手を否定することはしないように気をつけなければいけません。
さらに言えば、何度か会う人であれば、前回の雑談で話した内容を覚えておくというのも効果的です。覚えておいて、「そういえば前回こんな話をしましたよね。その後どうなりましたか?」というように話を振ると、相手は感動します。自分が話したことを覚えていてくれたということは、自分のことを気にかけてくれている人だということになるからです。
前回の雑談で話した内容を覚えておき、再度話題にあげるというようなことは、ビジネスでは有効なテクニックだと思います。相手が嬉しそうに話していた内容を必ず覚えておくことなどは、営業スキルの高いビジネスパーソンは自然とやっているのではないでしょうか。
相手に親近感を持ってもらう、自分との心理的距離を縮めてもらうということは、ビジネスの場であえて雑談をすることによって得られる最大のベネフィットでしょう。このことを念頭に置いて、どのようにコミュニケーションしたらいいかを常に考えておくことが大切です。
ラポールが生まれて親近感を持ってもらっていれば、いろいろな物事がスムーズに進む可能性が高くなります。よく知らない人やあまり好きじゃない人に何かを頼まれてもやってあげたいとは思わないでしょうし、パーティーなどに誘われても行きたくないと思うでしょう。しかし、仲のいい人や憧れている人からの依頼だったら、たとえ自分が忙しくても何とか時間を作って手伝ってあげようと思うものです。人間はそういう生き物なので、雑談でラポールを築いておくことが大切なのです。
雑談によって「下地作り」をしておけば、いざという時の交渉ごとや依頼などがスムーズに進む確率が高まります。意図的にそういうことをしている人もいると思いますが、もしあなたがそうではなかったのでしたら、今お話ししたようなことを今日から意識してみてはいかがでしょうか。
コミュニケーション能力は遺伝か?環境か?
KL:もともとコミュニケーション能力や、雑談が上手な人っていると思います。遺伝的な要因もコミュニケーション能力に関わってくるのでしょうか。
清水氏:人間のコミュニケーションの大半は言語によって行われます。言語を話す能力は遺伝的なものだと主張する人たちは大勢います。有名なのはノーム・チョムスキーですね。
チョムスキーは、人間の脳には「Language Acquisition Device」(言語獲得装置)が遺伝的に備わっているといっています。だからこそ、人間は非常に短期間で母語を自由に話せるようになり、言いたいことを言えるようになるのです。
したがって、言葉を操る能力には遺伝的な要素はもちろんあるとは思います。しかし、雑談が上手かどうかという点に関しては、例えば、日々のコミュニケーションを大切にしているような家庭環境で育っているかどうかなど、遺伝よりも環境的な要因の方が大きいのではないでしょうか。
ただし、「雑談が上手な人=ペラペラ喋る人」とは限りません。これまでお話ししてきたように、相手にたくさん話をさせ、それを共感を持って聞けることが「よい」雑談の条件ですので、一方的に喋り立てる人は雑談が上手な人とはいえません。
幅広い話題を豊富に持っていていろいろな話題に対応できる人は、雑談の上手な人になれる可能性は高いと思います。しかし、自分のことばかり話していたら、良好な対人関係の構築という面ではアウトでしょうね。
職場での評価を左右するコミュニケーション能力
KL:社会に出た時に重宝されやすくなるコミュニケーションの取り方について教えていただきたいです。例えば、仕事能力が高いけどあまり評価されない人と、仕事能力はあまり高くないにも関わらずコミュニケーション能力が高いから昇進するケースがあると思います。このような人はどういったコミュニケーションをとっているのでしょうか。
清水氏:能力の高低と好感度の高低というマトリックスで考えると、能力が高くかつ好感度の高い人が最強なのは間違いないでしょう。しかし、能力が高くても好感度が低い人もいますし、能力が低くても好感度が高い人もいます。残念ながら両方低い人もいると思います。
今回のご質問は、能力はあまり高くないのに好感度が高いために成功しているタイプの人についてのお話ですね。結局、好感度が高いというのは人に好かれている、親近感を持たれているということなので、このような状態になるためには、先ほどお話ししたような方法で周りの人と「よい」雑談ができるようになることが近道だと思います。
雑談は、最初にお話ししたように、対人関係の調整が主要な目的であるコミュニケーションです。「よい」雑談を通して職場の人たちとの間でラポールができているということは、相手から信頼されている、好意を受けているという状態なので、このような関係が築ければ会社において重宝されるはずです。
職場ですから、もちろん雑談だけが重要なわけではありません。業務上のコミュニケーションの大半は、「報告・連絡・相談」や上司から部下に対する指示などでしょう。こうした会話の役割の9割程度は情報の伝達です。
しかし、情報の伝達が目的だから正確に情報が伝わればそれでいいと思っている人と、相手との人間関係を意識して、相手は何を求めているのかを常に考えて話ができる人とではコミュニケーションの効果に差が出てくるでしょう。
情報の伝達がメインのこうした会話でも、「こういう言い方をするより、こういう言い方をした方が相手にとっては受け入れやすいはずだ、聞いていて気分がいいはずだ」ということまで考えて「報告・連絡・相談」ができる人、指示伝達ができる人は相手から好感を持たれるでしょうから、その積み重ねで仕事でも成功するんじゃないかなと思います。
KL:9割が情報の伝達だとしても残りの1割の部分を大切にする、雑談を通して人間関係を構築するという面でのコミュニケーションが下地にあれば、情報伝達の部分もスムーズにいくというようなイメージでしょうか。
清水氏:そうですね。業務上のコミュニケーションでも、そのような視点を常に取り入れておくことで、心理的な距離感を縮めることもできるし、信頼関係を築くこともできると思います。
そのような視点を常に意識してコミュニケーションをとっていれば、「塵も積もれば山」ということになり、職場で重宝されるようになるのではないのかと思います。
新たなコミュニケーションサービスの可能性を探る
KL:では最後に、コミュニケーションにおける新サービスについてお聞きします。もし先生が起業して何かしらの新サービスを作るとしたら、どういったサービスを考えますか。
清水氏:私が起業するとしたら、職場での生産性の向上や効率化、つまり職場の業績を上げるためにコミュニケーションをどのように活かすかという視点から何かできないかと考えると思います。
すでにいろいろなところで実施されているものもあるため、二番煎じになってしまうかもしれませんが、職場の中で自然に雑談が生まれる工夫や装置のようなものをサービスとして提供できる企業を作れたらと思います。「強制雑談発生装置」のようなイメージです。
私がアンケートの監修などをしているサントリーさんの商品に、「社長のおごり自販機」というものがあります。「社長のおごり自販機」は2人の社員証を同時にかざせば、2人分の飲み物が無料で飲める自販機です。
社員はお金を払わずに飲み物を飲みたいので、誰かを誘って「社長のおごり自販機」へ行くことになります。その時にはデスクを離れて自販機のところまで2人で歩いていかなければならず、歩いているうちに雑談が起こります。さらに、1つの社員証では1日に1回しか利用できないとか、同じ人とは一定期間利用できないなど、いろいろな設定ができるため、様々な人との交流の機会が生まれます。
導入企業に対する調査結果では、「社長のおごり自販機」を利用する際の雑談の時間は平均3分ほどなのですが、このような短い雑談を頻繁に行うことで、心理学でいう「単純接触効果」が働く可能性があります。「単純接触効果」とは、頻繁に接触している人や物に対して、人間は基本的に好意を持つという現象です。
このような雑談を促進するサービスを、自販機に限らず様々な形で提供するビジネスが考えられます。他にも、駄菓子屋さんのようなものを職場に設置したり、異なる部署の人たちが移動する際に接触せざるを得ないようなオフィス設計にしたりすることもできるでしょう。
外資系企業の中には、廊下の一部にスナックバーのようなスペースを設けて、社員が自由に飲食できるようにしているところもあります。このような物理的な雑談の場をオフィスに設計するというようなビジネスも面白いかもしれません。ただし、これらのアイデアの多くは既に一部の企業で実施されているので、全く新しいサービスを考えるのは私では難しそうです。
若い人たちには、既存のアイデアを新しく組み合わせて、イノベーションを起こすことを期待しています。先ほどお話しした「社長のおごり自販機」も、既存の自販機という商品をコミュニケーションツールとして活用するという発想から生まれたものです。
リモートワーク時代の新たな雑談の場
KL:先生から雑談のお話を伺って、雑談の発生頻度が生産性との関連性があるとしたら、リモートワークでも雑談を促進する方法があるのではないかと思いました。例えば、フルリモートのゲーム会社では、誰が暇で誰が雑談できるのかを可視化するツールを導入していました。先ほどの雑談を強制的に発生させるようなシステムがリモートワークに組み込まれていたら面白いのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。
清水氏:リモートワークでは雑談の機会が非常に少なくなるので、強制的に雑談を発生させるような装置を開発するというのは、とても面白いのではないかと思います。
リモートワークが流行り始めた頃、なんとか雑談の機会を維持しようと、多くの企業がチャットルームを作ったり、お昼休みや午後3時にZoomのようなツールで話したい人が自由に参加できる場を設けたりしていましたが、うまくいかないことも多かったようです。
私が知っている面白い取り組みとしては、バーチャルで一緒にテーブルを囲みながら、実は各自が自宅でお昼ご飯を食べているという会社がありました。リモートワークをしている社員が別々に自宅で食事をしているのですが、アバターが円卓を囲んでいる映像をVRゴーグルで見ながら、「今日は何を食べているの?」というような会話をしているので、あたかもみんなで一緒にお昼ご飯を食べているような感覚になるわけです。
従来の出社であれば、一緒にお昼ご飯を食べに行ったり、業務終了後に飲みに行ったりすることで自然に雑談の場を確保できていたのですが、リモートワークではこのような機会がないので、リモートワークならではの特色を活かした雑談の場を作ろうという取り組みだったのだと思います。
オフィスにいれば、社員同士のさまざまな接触の機会がありますが、私はこれを雑談とメインの活動との時間軸の関係で5種類に分類しています。
- メイン雑談:飲み会や昼食など、おしゃべりをするために人が1か所に集まっている状態。
- 暇つぶし雑談:会議前に早く到着した人たちが会議開始までに話すような雑談。
- ワンクッション雑談:会議後に廊下で立ち話をしてから自席に戻るというような雑談。
- ながら雑談:簡単な作業などをしながら行う雑談。
- いきなり雑談:エレベーターで偶然同僚に会って話すような雑談。
オフィスにいると、これらの雑談が頻繁に発生しますが、リモートワークではこうした機会はほとんどありません。したがって、リモートワークでは意識的に雑談の機会を作る必要性が高いと思います。
私は、上述した5種類の雑談ごとに、コミュニケーションの流れや適切な雑談の時間なども変わってくると考えています。例えば、「いきなり雑談」では悠長に長話をしている暇はありません。お互いが自分の活動をしている時に偶然出会って始まる雑談なので、なるべく早く切り上げる必要がありますが、そっけなく終わるわけにもいきません。
「メイン雑談」のように長々と話す雑談とは当然会話の内容や表現が変わってきます。例えば、「最近調子はどう?」と聞かれても、詳しくは話せないので「まあ、なんとかやってるよ」といった簡単な一言で返し、相手に「そっちはどう?」とは聞き返さないほうがいい場合もあるでしょう。
このように一言で「雑談」といっても、そこには非常に多くの要素が関わっていることがわかったと思います。これらの特徴を踏まえて、職場のコミュニケーションを活性化するために、オフィスやリモートでどんなことができるのかを考え、サービスにつなげていくことが大切なのではないでしょうか。